美緒から告白された翌日の朝、俺たち剣道部員は、宮下先生の運転するマイクロバスで、名古屋の会場へ来ていた。

「いよいよだな、拓」

アリーナの入り口前の長蛇の列の中で、剣斗が言ってきた。

「そうだな」

いつも自信たっぷりの剣斗も、今日ばかりは緊張しているようで、表情が固い。

「拓は緊張してねぇのか? 」
「してるよ」

別の意味で。だってそうだろう? 自分の好きな女子が観に来るのだから。昨日の帰りの件など何も知らない剣斗は、キョトンとした顔をしている。
早くこの時間が終わらないかと願っていると入り口が開いて、俺たちは会場に入った。