私がここへ来てからもう3週間ほどになる。調理師専門学校にも慣れて、家事もなんとかこなしている。パパは毎日機嫌が良い。食事も美味しいと言って食べてくれている。

新婚生活ってこんな感じ? やっぱりちょっと違うかな? あまりドキドキ感がないし、当たり前だけどHもない!

もともと私とパパは性格が似ていると思っていたけど、一緒に生活して違うところもあることが分かってきた。

倹約家で、ものを無駄にしない、無駄なものを買わない、ものを大切にする。これは私と同じ。ケチとは違う。お金を出すべきところは思い切ってしっかりと出す。「出す必要のないものを出さないのが倹約、出すべきものを出さないのがケチ」とか言っていた。同感。

それからせっかちなところ、私もせっかちだけど、それ以上だ。今相談していたことをすぐに実行に移す。決まったことはすぐにしないと気が済まないようだ。

それから綺麗好き。ただ、私ほどではない。目に見えるところはとても気にするが、自分の部屋でも見えないところに結構ほこりが溜まっている。

それからシャツなど汚れていないと1回着てもすぐに洗濯しない。でもそれを言うとしぶしぶ洗濯に出してくれる。私は1回着ると洗濯しないではいられない。

理由を聞くと、あまり洗濯をすると生地が傷んで長持ちしないからと言っていた。まあ、一理ある。私はしょっちゅう洗濯するからブラウスでも早く着られなくなることがある。

それから、整理整頓が上手というか、片付けがうまい。きちっと論理的に並べていると言うか整理している。だから、すぐに探し物が出てくる。要領を聞いたら、分からなくなったら、自分だったらどこに片付けるかを考えるそうだ。そしてその場所を探すそうだ。

私にはまねできない。私は綺麗好きだけど、整理整頓や片付けは大の苦手だ。下着でも綺麗にたたむところまではできるのだが、それを種類別に分けてしまうことが苦手だ。

私の衣装箱を一見すると綺麗に入っているが、種類は順不同になっている。でもそれが不規則なりに繰り返されているので、実際にはそんなに困らない。

でもパパはそんな私に小言も言わずに整理や片付けを手伝ってくれる。ありがたい。私にはここでは大切にされている、守られているという安心感がある。

でもちょっとドキドキした間違いがあった。朝起きてトイレに入ったら、下ろした下着がなにか違う。よく見たらパパのブリーフだった。それも後ろ前に履いていた。

昨晩、お風呂に入ったときに、洗濯したものと着替えたけど、気が付かなかった。ただ、少し緩いなと思っただけだった。ゴムが緩んだとしか思わなかった。そういえば夜中、お尻のあたりがいつもの感じと違うと思っていた。

へへへと思わず笑ってしまった。いつ、どうしてパパのブリーフが私のところへ混入したか分からなかった。確かに分かっていればこんなことは起こらない。

すぐに部屋に戻って自分のものと履き替えた。そしてすぐに洗濯機を回した。よくよく考えてみると、パパのが1枚、私のところへ混入したとすると、私のが1枚、パパのところへ混入したかもしれない。でもパパは何も言っていなかった。

パパが出勤した後にパパの部屋に入って、初めてパパのクローゼットを開けた。記帳面なパパらしく綺麗に整理整頓されている。

すぐの下着のプラケースが見つかった。開けてみると整然と下着が入っている。ブリーフもきちんと整理されて入っていた。

ただ、私の下着は見つからなかった。まさか、パパが気付かないで履いて行ったはずはない。でもあり得るかもしれない。私も気づかないで履いていたから。確信はもてなかった。それなら、何か言ってくるだろう。

残念ながら私は自分の下着の枚数を把握していなかった。1週間分7枚くらいはあったと思うけど定かではない。それまで待っていればいいことだし、謝ればすむこととだ。

◆◆ ◆
すっかり、忘れていた。間違えたことが分かった翌日に洗濯が終わって、ベランダで干していると、私の下着が2枚あった。確か昨日は1枚しか着替えなかったはず。1枚はどこから出てきた? 先日の洗濯の際に取り出すのを忘れて残っていた? そんなはずはない。昨日は1枚畳んでしまったのを覚えている。

ということは、パパが出した? でもパパのブリーフはちゃんと1枚ある。どこからか1枚出てきた。考えてみるとパパしか考えられない。きっと間違えたことが分かって、私がいやな思いをしないように、分からないようにしたんだと思う。聞いてみてもきっと知らないと言うと思う。

でもそれから1か月くらい後になって、パパは何を思ったのか、白のブリーフを黒のボクサー型のパンツに徐々に買い替えていった。ほとぼりが冷めたと思ったのだろう。そのとき私はパパも私のものを間違えて穿いたんだと確信した。

でもパパらしい。私が嫌がると思って気を使ってくれたんだ。それまで私のことを大切に思っていてくれることが嬉しかった。だからこのことは気がつかなかったことにしておこう。