私はこのごろ仕事にも慣れて心のゆとりができてきた。時々、非番の休日に友人と食べ歩きをしている。チーフからいろいろ食べ歩くこともコックには必要なことだと言われていることもある。

一緒に食べ回っているのは専門学校の同期の女友達で、あのベッドを一緒に買いに行ってくれた米田さんだ。彼女はパティシエで職場は違うが、気が合って今は時々食べ歩きを一緒にしている。

でも私たちはいわゆるB級グルメで高級レストランを回っているわけではない。まあ、そんな贅沢はできないし、腕を磨くためと言っても限度がある。

美味しいケーキさんでお茶したり、人気のラーメン店やランチが美味しというレストランなどを回っている。私はこってりした味の料理が好きだけど、彼女も割と濃い味の料理が好きで、味の好みも似通っている。

やっぱりこってりした料理を食べてきた次の日はトイレの後が臭う。換気扇を回してもなかなか臭いが消えない。パパに悪いから消臭剤を持って入って噴霧してから出るようにしている。注意はしているが、消しきれない臭いが残ることがある。

昨日は早番だったので、友達とB級グルメの探索をした。パパはにおいに敏感だから、帰ってきた時に「今日は美味しいもの食べた?」と聞かれた。

今日の土曜日、私は非番で休日だ。二人の休日が重なる日は貴重だ。

私はベランダへ出てガラス戸を拭いて、それからベランダを履き掃除している。今日はお天気が良くて清々しい風が吹いて、心地よい休日だ。

パパはソファーに寝転んで私を見ている。戸口から心地よい風が部屋に入っている。パパは気持ちよさそうだ。こういう毎日が幸せな日々というのかとふと思ってしまう。

気持ちがいいけど、ちょっと催して、意識しないで漏らしてしまったみたい。

「なんか異臭がする。外から風にのって入ってきているみたいだから、中に入った方がいいよ」

「ベランダでは臭わないけど、どんなにおい?」

私は、まさかと思って、中へ入ってクンクンした。

「何も臭わないけど」

そういうとまたベランダへ出た。でも、我慢しきれなくなってまた漏らした。やっぱりさっきの異臭というのは私の?

「やっぱり異臭がする。とりあえず中に入っていた方がいい」

また、中に入ってくんくんする。今度は臭いが分かった。「へへ」と照れ笑いするしかなかった。そして「大丈夫だと思う」と言った。

「どんな臭いか分かった? すごい臭いだろう。命の危険を感じない?」

「命の危険? これくらいの臭い大丈夫じゃない。それも微量だし」

パパが私をじっと見てる。笑いを隠せない。もう隠せない。すぐに謝ることにした。

「へへ、ごめんなさい。我慢できなくて、ベランダだから大丈夫だと思った」

「ええ、勘弁してよ、風上でするのは」

「昨日、お友達とガーリックが効いた美味しい料理を食べたの。それで今朝、お布団の中で漏らしたら、この臭いがした。ごめんなさい」

「確信犯だ!」

「これからは気を付けます」

それから私はB級グルメめぐりではにおいのきつい料理を避けることにした。美味しいけどしようがない。米田さんにはその理由を話せなかった。

パパは私のいないところではしているかもしれないけど、私の前では絶対にしない。パパの部屋に入ると変なにおいがすることがある。

お互い目の前でするようになれば夫婦も本物だという話を聞いたことがある。でもパパとこきっこをするなんて、想像するだけでも興ざめだ。