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「あっ! 葵ちゃんおはよう!」

 葵を見るなり、陽太は元気に挨拶してくる。

「陽太、ずいぶん早いね」

 苦笑しながら言うと、陽太は「そんなことないんじゃない?」と首を傾げた。

「だって、もう九時になるよ? それに学校に行く日だったら遅いぐらいだと思うけど?」

「そりゃそうだけど……。けど、私はさっき起きたばっかだし」

「えっ! さっきまで寝てたの? なんで?」

「――休みだからに決まってんでしょ。もう、いちいち煩いよ……。
 それより入んなよ。お母さんも、外で陽太を待たせちゃ可哀想だ、って言ってたし」

 葵が言い終わるか終わらないかの間に、陽太はそそくさと靴を脱ぎ始めた。
 普通ならば図々しいと思われがちな行為であるが、葵の家では陽太は常に歓迎されるので、彼が来ると母親が特に手放しで喜ぶのである。

「ハル君いらっしゃい」

 案の定、母親は心の底から嬉しそうに笑みながら、葵と並んでリビングに入ってきた陽太を歓迎した。

「おはよう、おばちゃん!」

 陽太もすっかり気を良くしたようで、母親に満面の笑みを返していた。

「ごめんね。葵はまだご飯の途中だから」

「ううん、待つのは慣れてるから大丈夫だよ」

「あらあら」

 二人のやり取りを見ながら、葵は何とも言いがたい複雑な気持ちになった。

(とりあえず、とっとと食べちゃお……)

 葵は自分の定位置に再び戻り、正座して箸を手に取った。