そうしてペダルを漕ぎ続けて十数分程は経っただろう。僕は山のふもとまで来てさっきの光源を探し続けていた。
「気のせいだったのかな……」
 そう思った。まだ日中と言う事もあるので、多分太陽の光が反射して違和感を覚えただけだろうと僕は思っていた。そうして元の進路に戻ろうとした時だった。
 明らかに影の位置が変だという事に気づいた。影の差している方向と逆側――後ろの方に体を向けると、何かが光っている様な……そんな風に見えた。と言う事は、さっきみた光はもしかして……そう思った僕はそのまま自転車をU字回転させて光源の方へと走らせる。
 少し眩しかったが、なんとか見れるぐらいの強さではあったので、そのままペダルを漕ぐ事は出来た。そして、そのまま光源にとたどり着いたのだけれど……。
「空き家……?」
 その光源先は家だった。しかも、明らかに手入れがされていない状態だったので、ここには誰も住んでいないとわかったのだ。
 妙に古く感じるその小さな一軒家の周りに家が無い事に気づく。僕はどこか不気味に感じたその家を後にする事にした。

  *

 次の学校の日。僕は教室の自分の席で本を読んでいると、彼女……楠野さんが教室に入ってくる所を見かける。やっぱり同じクラスだったんだと思いつつもなかなか話しかける勇気はでない。
 ここはプライベートな空間とは全然違う事、そして何より気恥ずかしさもあったのが理由だった。本当はそんな事関係なしに普通に話せればいいのだろうけれど、今の僕にはその発想は出てこなかった。
 そうウダウダとして朝の朝礼が終わった後もなかなか話すチャンスには恵まれなかった。