黄昏、君を探して。



 モールの外、バス停近くのベンチに座りながら、私は深くため息をついた。


「氷無しで注文するべきだった…」


 容器の周りは外気温の蒸し暑さと冷たさの差で、結露を起こしている。その水滴が左手をさらに冷やして、凍傷でも起こしそうだ。


 ……そういえば、相川はなんで、私のアクセサリーを見て泣いていたんだろう。
 どこにでも売っているようなものなのに。

 もしかして、何年も前のレア物とか?
 もしそうだとしたら、これ、ネットで一度は話題になっていてもおかしくない。

 そう思って、タピオカが入った容器を腰の横に置き、ポケットからスマホを取り出した。

 検索サイトを開いて、「レジンアクセサリー レア物」と検索エンジンをかけ、見つけやすいように画像欄をクリックした。


「あれ……おかしいな……」


 いくら下の方にスクロールしても、私が持っているアクセサリーと合致しない。

 売り物のはずなのに……。

 手が疲れてきた私は調べることを諦めて、スマホをポケットにしまった。


 相川のことを置いてきてしまったし、今更戻るのもどこか、嫌な感じ。

 帰りたくても、次のバスが来るのは三十分後。
 田舎だから、いくら大きなショッピングモールだとしても、一時間のうちに走るバスの本数は多くて三本。


 相川が前に住んでいた東京なら、一時間に何本ものバスが通っているのだろうけれど。


「ここにいたのかよ…!」


 誰かの怒鳴り声が聞こえてきて顔を上げると、そこには相川がいた。
 モールのフードコートからはそんなに離れていない――高校生が走ったとしても息が上がるような――はずなのに、相川は酷く咳をしながら、肩を上下に動かして私を睨んでいる。


「探したんだからな! 急にいなくなるなよ!」


 相川は、こちらがゾッとするくらい、大量の汗をかいている。
 罪悪感が襲ってきた私は、相川の声を無視して去るために、立ち上がってタピオカを右手に持って走ろうとした。

 急に後ろから左腕を強く引っ張られて、私は立ち止まってしまった。

 一刻も早くこの場を去りたい、今日の出来事全てを忘れたい。

 けれど、相川はそれを許さないとでも言いたげな雰囲気を醸し出していた。


「なんで俺から逃げるんだよ」

「し、知らない!」

「だったら俺から逃げる必要無いだろ……理由、あるんだろ?」

「……転校してきたばっかのあんたに、私の何が分かんのよ!」

 その時、私は言ってはいけないことを口を滑らせてしまったことに気がついて、引っ張られていた腕を振りほどいて、家まで無我夢中で走った。