黄昏、君を探して。



 遠足の日は、雲一つない綺麗な青空が澄み渡っていた。

 私はクラスの中で特に目立つ、いわゆる一軍的な存在のグループの一員だった。まだ、あの頃は――。


美生(みお)、あれ乗らない? 日本で一番怖いらしいし! 後ろ向きのジェットコースターなんだって! みんなも一緒に乗ろうよ!」


 この時の誘いを私は頑なに拒んだ。

 単純に、怖かったから、それだけ。

 たった、それだけの、理由。

 あの時の誘いを嫌でも受け入れていれば、私は今頃、間違いなく一軍にいたはずだった。
 一年生の頃から学級委員の学年代表として活躍していた実績があるし、リーダーシップも取れていたはず。
 そう信じて疑ったことはなかった。

 けれど……。


「……は?」

「みんなで楽しい気分になってたのに、空気読めよー学級委員」

「てか、クラスの代表ならウチらの気持ちくらい察する努力してくださーい」


 聞くに耐えない言葉のナイフ達が、心臓に突き刺さった。笑い声混じりのせいで、私は反応に困った。

 今思えば、遠足での出来事が、悪夢の始まりだった。
 私がそのことに気がついたのは、ゴールデンウィーク明け初日。

 グループのみんなで、毎日放課後残って勉強会をしよう、そんな会話をしているのが聞こえて、話の輪に入ろうとした時だった。


「私のこと忘れてるでしょ〜!」

「え?」

「やだなぁ、みんな。私もこのグループの一員だよ?私も今度の中間危ないし、みんなで勉強会するなら私も入れて欲しい!」


 私がそう言った途端、周りの目を憚らずグループのみんなが嘲笑した。
 その光景、音に、私の世界から音が消えた。
 私はこの悪夢から目覚めるために、きっと心の中では何度も反抗していたんだと思う。

 その反抗は、暖簾に腕押しもいいところで、虚しく散った。


「ねぇ、あんたさ、バカなの? 察してよ」

「いつどこで、誰が、先生に媚び売る、空気が読めない学級委員の神崎美生さんを”友達”と言いましたか?」

「そもそも、あんたと友達だった覚えないわ〜。勝手についてきた金魚のフン」

「ぷっ! やめてあげなよそれ〜!あははは」

「だってさ、マジそうじゃね? お前に拒否権無いからー!」

「そもそもさ、あんた、うちらと友達だったっけ?」


 その言葉を最後に、私は、グループのみんなから逃げるように保健室へ駆け込んで泣き続けた。

 記憶はそこまでしか残されていない。

 これ以上は、全身が硬直して、あの日に心が取り残されたままだということを、勝手に思い出してしまう。