黄昏、君を探して。



 体を揺さぶられて、片手で拒んだ。

 まだ、寝ていたい。


 許されるのなら、永遠と。


 私の知らない時間まで。


「早く起きろって」


 うるさい、煩わしい。


 隣の席のクラスメイトに対し、私は悪態を心の中で吐きながら、机の上に伏せていた上半身を起こした。


 鋭い視線を感じ、教卓の方へ目を移す。すると、そこで担任の宮藤(くどう)先生が仁王立ちしていた。
 宮藤先生は、鬼のような目つきで私を睨んでくる。


 「神崎(かんざき)、お前、後期開始早々から良い度胸してるなあ」

 「すみません」

 「……よし、そんな肝の座った神崎に、後期も女子の学級委員やってもらう! 決定なー」

 「いや、あの先「異論は認めない」


 私みたいに責任感のない人間に学級委員を「やらせる」そんな宮藤先生は、ありとあらゆる神経の根っこが腐り切ってるんだと、私は私に言い聞かせた。

 ♦

 少しだけ苦そうな香りが漂う職員室。

 宮藤先生の机に大量の資料が積み重なっているのが見えて、思わず溜息を吐いた。


「……じゃあ、この資料を教室へ持っていって」

「私一人で、ですか」

「当たり前だ。男子の学級委員はまだ決まっていないし……とにかく! ほらもういいから、とにかく教室にこれ持ってけ」


 面倒くさそうに私の両腕に30人分の資料が乗せられて、あまりの重さに目眩が襲ってきた。
 けれど、私はすぐに顔を上げて「分かりました」と満面の笑みで答えた。


 教室までの廊下を歩いている途中、さっき作り笑いしたからか疲れてきた。

 廊下に置かれた机に資料を置いて休もうとした時、目の前の教室のドアが開いた。
 そこから出てきた男子生徒に、私は息をするのも忘れて目を見開いた。

 見ず知らずの男子生徒――黒く艶のある短髪と哀愁がただよう黒い瞳、そして、百六十センチある私の身長より少し高い彼――に、私は吸い込まれそうになる。
 私は彼に見惚れていることに気がついて我に返り、急いで顔を逸らして、机の上から資料を持ち上げてその場を立ち去った。