朝のルーチンを済ませて、自分の部屋に戻る。
 ベッドに体を投げ出して、大きくノビをする。
 見慣れた天井。見慣れた壁。勉強机に、本棚。
 やっぱり自分の部屋が一番落ち着く。

 私の部屋は友達を連れてくると、必ず
「珍しいね」とか、
「変わった趣味ね」とか、
 言われる。

 それは、部屋の彼方此方にカワセミが飾られているからだ。
 カワセミのポスター。自分で描いたカワセミのイラスト。
 壁の収納ポケットに入れたカワセミの缶バッチの数々。
 ヒヨコやペンギンにしか見えないカワセミの縫いぐるみ。
 机の上にはカワセミのデコイが番いで置いてある。

 そうなのだ。カワセミは私のマスコットなのだ。

 幼いころ、両親に連れられて自然観察の森を訪れた。
 森の中の池に、野鳥を観察するポイントがあった。
 その観察窓を覗いた瞬間に、目の前の枝にカワセミが停まって、私と目があった。

 胸と目の周りの鮮やかな赤、喉と耳の清廉な白、自ら光を発しているとしか思えぬ
背中の青。
 まるで、宝石のように思えた。
 そして、それが生きて、空を舞う鳥であるという驚き。
 私は、その瞬間にカワセミの虜になった。

 私は、カワセミの背中の青が好き。
 カワセミは漢字で翡翠と書く。
 この「翠」の文字が、羽の色を表していて、ミドリと読む。
 そうだ、私はこの翠が大好きなのだ。
 猫にミドリという名を付けたのも、他ならぬ私だ。

 と、ここで私は、不思議なことに気が付いた。