「本来、あやかしの子どもは、あやかし同士が結ばれて生まれてくるわ。中には、ミーコちゃんみたいに強い想いを持った動物が、死んだあとにあやかしになることもあるけれど」

 驚き戸惑う私に、京子さんは説明を始める。


「あたしみたいに人間の姿で暮らすあやかしの中には、人間と結婚するあやかしも存在するわ。基本的には人間とあやかしの子どもってできないものなのだけど、どういうわけか、ものすごく低い確率で子どもを授かることがあるのよ」

「そうなんですか……? じゃあさっき由梨ちゃんが自分のことをあやかしでもなければ人間でもないって言っていたのは……」

 由梨ちゃんの言っていた意味を理解した私の口元に、京子さんの長い人さし指と中指が添えられる。


「違うわ。あやかしでも、人間でもあるってことよ。あやかしと人間の子の場合、ちょうど血が半分ずつになることで、どちらの性質も受け継ぐことになるから区別されてしまうの。一方で、それ以降の子孫ができた場合、あやかしと人間の血の割合の強い方の性質に属することが多いから、その場合は区別されないんだけどね」

「……そうなんですね」

「そう。私やミーコちゃんと違って、由梨ちゃんは本来の姿に戻っていたにも関わらず、人間に近い見た目をしていたでしょう?」


 確かにそうだった。

 由梨ちゃんはそんな自分の姿を、この不完全な姿が私の本当の姿だと言っていたのだから。

 けれど、そこで今まで何となく引っ掛かっていた事柄の正体に気づいた。


「そういえば、坂部くんの元の姿もかなり人間に近い姿をしてますよね……」


 坂部くんからは、彼自身は漆黒の狼のあやかしだと聞いている。

 だけど、今の京子さんの説明に照らし合わせると、坂部くんの本来の見た目からは、由梨ちゃんと同じように人間の性質も持ち合わせているように感じた。

 私の推測に対するこたえを求めるように京子さんの顔を見るけれど、京子さんはこれに関しては無関係と言わんばかりに首を横に振った。