「さぁ、始めよっか。」

次の日の放課後から、台本班は始動した。

一番最初に仕上げないといけないってことで、一番早く準備を始めることになった。

それも、十数話あるドラマを一時間に収めないといけないからなるべく早く、ってことで、五、六ヶ月前から。

「各回の最後のシーンは必要だよね。一番視聴者の気を引くようになってるから。」

「友達のサイドストーリー的なところは入れなくていいよね?メインの六人しかまだ役決めてないから、茶道の女の子の役もまだ決まってないし。」

「じゃあ弟のサイドストーリーもいらないよね。」

「雨のシーンってどうする?あそこめっちゃ大事だけど再現するの大変だよね。」

最初の一週間は必要なシーンやイベントを書き出して、二週間目から元の台本を頼りに文化祭用のを作ることになった。

だから、今日は大事だと思うシーンを書き出す作業。

どこをどう削るかは明日、明後日以降の作業。

私は元々こういう作業が好きだし、大好きなドラマの再現の台本に関わりたいと思ってこの班に立候補したけど、真哉は適当にこの班に放り込まれた。

それ故、真哉は話し合いが始まってからずっと寝てる。

自分が主演であることの自覚がないのか、興味がないのか。

とにかく、私とは真逆の態度だった。

後で、サボっても良かったんじゃない?っておちょくってやろう。

そんなことを思っていた矢先、とんでもない事に気づいた。

真哉と永原さんの役には、キスシーンがある。

さらに言えば、私と、真哉の役の友達のもあるし、私と真哉のもある。

しかもストーリー上一番必要ないのは主役二人のキス。

真哉以外の人とキスなんてしたくない。

真哉とももう何ヶ月かしてないのに。

ましてや真哉が永原さんとなんて。

「ねぇ、キスシーンのところってどうするの?二、三個あるでしょ?」

そう思っていたら、無意識のうちに訊いていた。

私のその必死の疑問を聞いて数人があっ、という顔になり、ほか数人も唸った。

「そっか、主役二人以外もあるんだっけ。」

「じゃあハグで置き換えちゃう?」

その提案を聞いて胸を撫で下ろしたのも束の間、次の指摘は私が恐れていたものだった。

「でも婚約者とのあのキスって結構重要じゃなかった?」