10年と1日前の春を。

ハルトは、私を連れて、公園まで行った。

ここで何をするのかと思えば、ハルトは座るだけで。


「えっと・・・・・・」


「こっち座って」


ハルトは自分の隣をゆび指した。

恐る恐る座ってみても、特に何も言われなかった。

数分の無言の時間が過ぎて、ようやくハルトが口を開いた。


「あのさ、俺、ある人にあったんだ・・・・・・」


ハルトは、独り言を呟くように話し始めた。

ある人・・・・・・。


「その人は俺の大事な人だった。 でもその人は・・・・・・すぐに俺の目の前から姿を消した」


「・・・・・・」


「俺はそんなの許せなかったんだ。 だから、だから今度会った時は、ちゃんと叱ろうと思ってた」


少し泣いているように聞こえるハルトの声は、いつもより弱く感じた。


「それで・・・・・・その人の名前、は?」


喋っていないせいで、乾いた声で聞いた。

ハルトは、私の視線を合わせて言った。







「怜だよ」






その名前を聞いた瞬間、体全体に鳥肌が立って、感動した時のように動けなくなる。

でも・・・。

でも・・・・・・。



「ねぇ・・・・・・ハルト」


「なんだ?」


久々に見るハルトの優しい顔に、私は続きを言う。