10年と1日前の春を。

「あっ、李依、おはよう! 昨日の返信見たよ〜! 参加ありがとうね! いやぁ、あんたがいないとあたしは死んじゃうんだから!」


朝教室に入り、すぐに私を見つける百香。

いつも通り私に抱きついてこもった声で話す。


「今日ちゃんと私に着いてきてね! 確か今日は委員会なかったでしょ?」


黒板の隣に貼られてある日程表を私を連れて見に行く。

その通りで今週は委員会の仕事は特にない。
あるとしたら、裏庭の花壇の整備だけだ。

多分中田君も遊ぶだろうから、今日は他のクラスの子にお願いしておいた。


他のクラスの子も、委員会の仕事はガン無視で遊びに行く事だって少なくないのだから。


「あ、やっば! 宿題やって来てないぃ! 李依、宿題写させてぇー!!」


「えぇ? 他の子はダメなの?」


「あいつらじゃダメなんだよ〜! 李依じゃないと絶対許さない!」


「もーどの立場で言ってるのー? ていうか私、もしかして窘められてる?」


「そんな事ないって! 李依は親友だからの話! 窘めてるとか、そんなのじゃないもん!」


お得意の頬膨らませ技で、必死に否定する。

可愛いし積極的だし、やっぱり私とは違っていいよなぁ・・・・・・。

百香が男子にモテる理由が分かる。

こんな消極的でネガティブな私なんて狙うのは、きっとハルトだけだ。

それも、本命じゃないし・・・・・・。


「李依ー? めちゃくちゃぼーっとしてますよー? もうすぐ松ちゃん来ちゃうから、早く席座らなきゃじゃん!」


「ほぇ!?」


かなりぼーっとしていた私は、百香の声で起こされた。

クジラの鳴き声かっつーの。


「そっそうだね。 ごめん、考え事してた!」


私は一度試しに、百香のマネをして、手を顔の前で叩いてみた。

水道の前にあった鏡に自分の姿が写り、何だか虚しくなり、すぐにその手を後ろで組み直した。


「変な李依〜」


くすくすと存分に笑って、その後男子に声をかけられて話に花を咲かせていた。

贅沢だよなぁ・・・・・・。


「みんなー、席に着けー。 HR始めるぞ」


前の方の扉から担任の松山先生が入ってくると同時に、生徒達はわらわらと自分の席へと戻って行った。