10年と1日前の春を。

私は、一人ですっかり暗くなった道を歩いていた。

もちろん怜は頭の中にいるけど、私は今日起きた事に少々驚きが隠せなかった。

あの後すぐにハルトのもとから逃げて、怜が怒った表情で帰ってきたのを覚えている。

そんな怜が今ここにいるのだ。


微妙に信じられない。


あんな姿をハルトに見せるなんて・・・・・・。

ただ会って話をするだけだと思っていればこれだ。


「・・・・・・っておい、ぶつかるぞ」


一瞬バレたかと思って手に力を入れたが、全然バレていなかった。

目の前には高い電柱が私を見下ろしていた。


「うん・・・・・・ありがとう、怜」


「ん」


全く気にしていないかのような一文字の返事。

私がこんなにも怜の事を考えているというのに、怜は何も知らないのだろうか。

いつもなら私の考えている事にちょっかいをかけてくるのに・・・・・・。
やっぱりハルトを気にしているのだ。


「・・・・・・はぁ」


いかにもネガティブな怜のため息。

きっと私がため息をついたら「そんなにため息ばっかりついてたら幸せ逃げるぞ」なんて笑っていいそうだ。


「怜、ちょっと公園よって行こうよ」


静かな公園を見ていると、何故か入りたくなって、私は怜に誘う。


「は? なんでだよ・・・・・・。 もう夜だぞ、早く帰らないととか、親の事考えねぇのかよ」


私が悪い事をする時、怜はにやけて否定するが、いつも付き合ってくれる。

怜がそれをすると喜ぶ事を知っている私は、怜を利用して公園に入った。

案外暗くなっている空を見上げる。

いつも座っているベンチに腰をかけて、真っ二つに割れた月に目をやった。

綺麗な三日月の周りに、子分のように散っている小さな星を手で隠した。

都会だというのに、星は雲に身を隠さずに出ている。

プラネタリウムまではいかなくても、誇りを持ってそうに見える星に、少しだけ嫉妬した。



「私も星みたいに綺麗になれるかなぁ・・・・・・」



まだ泣いた跡がある目元に、私の腕を置いた。


「綺麗になって何すんだよ」


「え? うーん、ハルトに綺麗だねって言ってもらうの」


「言ってもらえなかったらどうすんの?」


「そうだなぁ・・・・・・その時は怜に言ってもらおうかな」


「なっ・・・・・・!」


冗談で言ったつもりの言葉でも赤面する怜に、少しだけ笑みを漏らした。


でも、本当にハルトに綺麗だねって言ってもらいたい。
せめて私を見て微笑んでくれるだけでもいい。

近くにいて欲しい。


「ねぇ怜」


私は横切った野良猫を眺めながら怜に訊ねた。


「ん?」


お決まりの返事をしたのに安心して、私は続ける事を決意する。







「私に隠してる事、言ってくれないかな」