ヒロ君がバイトに来てくれて、一週間が過ぎた。

時間を重ねても、ルールがあるため、お互いがお互いの事を何も知らない。

出会った日に少し話してくれた彼女の事とお母さんのヒロミさんの事……

それ以外は何も知らない。

履歴書を対馬さんが預かったけれど、私は見ていないし……

何歳なのかも、何をしているのかも知らない。

私も気になってはいたけれど、なかなか聞けなくて……

(ヒロ君が絡むと対馬さんの態度がおかしいし……)

対馬さんからも何も言ってくれない。

雇い主が年齢も本名も知らないだなんて、アリですか?

「今日はカレーでいー?」

「はい、何でも……」

ヒロ君が料理をしている間は、私はやる事が無いし、キッチンから追い出されるしで…テーブルで雑誌を読んでいるのが、ほとんど。

まぁ、雑誌を読んでいるフリをして、ヒロ君の後ろ姿を眺めているんだけれども……。

明日からは締め切りが間近になるから、バイトはお休みなんだ。

だから、ちょっとの間、この後ろ姿は見納め。

漫画雑誌が月に二度の割合で発売(5日と20日)になるから、締め切りは二回。

月に二回は、バイト休みの間隔が長くなる。

漫画家だと言う事実を隠しているから、来て貰う訳には行かないし…… 寂しくても我慢するね。