最上部でエレベータが止まりドアが開く。
 そこからトリフネ本体までは空中回廊になっている。
 回廊の数メートル先にはトリフネの司令船カプセルが見え、その周りにスタッフが
数人待機していた。
 私達がカプセルの前まで進むと、カプセルの搭乗ハッチが開けられた。
 カプセルの中は暗く、幾つかのランプが明滅を繰り返している。
 スタッフに助けられながらカプセルに乗り込む。トリフネの司令船は五人乗りで、
私達二人にとっては充分な広さだ。けれども、ハッチは一人分の間口しかないので、
与圧服を着たまま乗り込むのは大変だった。
 まず最初に陸くんが乗り込み、座席に座る。それから与圧服にケーブルやパイプを
接続していく。
 それが終わると次は私の番だ。同じようにハッチからカプセル内部に入り込んで、
陸くんの右隣りの席に収まり、セッティング作業が続く。

 20分ほどかかって、私たちの搭乗は完了した。
 最後にハッチから原口局員が顔を覗かせる。
「カプセルの準備は出来ました。これでハッチを閉じます。この後は、管制の指示に
従って下さい」
「わかりました。今までありがとうございました」と陸くんが礼を述べる。
「ありがとうございました」と私も続ける。

 原口局員は感に堪えない表情に変わり、
「陸くん、美幸くん……」
 と言って、後の言葉が続かなくなった。
「君達の……無事を祈っている」
 原口局員が手を差し出す。私達は、代わる代わるその手を握りしめる。
 固い握手の交換の後、原口局員の手でハッチが閉められた。