ハッと我に返り、見つめ合っていた恥ずかしさから、また別な話題を切り出す。
「そういえば、ネロは白変種だよね。虹彩が黒いもの」
「白変種?」
「メラニン色素の遺伝変異が原因じゃなくて白化した動物のこと。孔雀、梟、虎にも
居るわね」
「ふーん」
「陸くん、さっき、ネロは望んで白く生まれたんじゃないって言ったでしょ。でも、
白変種は、望まれて生まれてきてるのよ」
「望まれて?」
「氷河期に保護色となる白化の形質が遺伝子の中に組み込まれた。それが白変種なん
だと言われてる。だから、ネロはその形質を未来に伝えるために生まれてきたのよ」
「形質を……、伝えるため……」
「きっと、全ての生き物は、何かの役割を果たす為に、生まれて来るんだと思う」

 何かの役割を……果たすため。……何かの……役割を……。
 陸くんが、私の言ったフレーズを繰り返す。
 陸くんの目が潤んできた。感動しているんだ。
 それほど、素晴らしい名言を吐いたつもりは無いのだが……。
「そうか……。そうだったのか……」
 と陸くんが独り言ちる。次の瞬間、陸くんの頬を一筋の涙が伝う。