俺は説明し終えた後、
「どうだ? 分かったか?」
と聞いた。
彼女は真剣に聞いている時は、笑っていないけれど小さく口を開けているところが、たまらなく可愛い。
「うん、ありがとう!」
琴音は、嬉しそうな笑顔で答えた。可愛すぎて苦しい。甘いお菓子を喉にでも詰まらせた時と同じくらい苦しい。
そんなことも知らずに、琴音は一生懸命計算を解いている。
「よし、解けた! 答え合わせしてみるね!」
琴音は、筆箱から赤ペンを出した。
「あ、やった! 合ってる! ありがとう、晴人のおかげだよ!」
俺のおかげ、なんかじゃないと言いたい。お前は、ちゃんと話を聞いていたじゃん。
「ごめんね! いつも勝手に押しかけて、勉強まで教えてもらっちゃって」
琴音の言葉に、俺はプッと吹き出した。その言葉は、もう耳にタコができるほど聞いた。
「それ、何回言ったら気がすむんだよ。全然いいって言ってるじゃないか」
もう俺と琴音は、交際している。だから、琴音に教えるのは、俺しかいないのに。