チャイムが鳴った。俺は、廊下についてあるインターフォンの受話器を取る。
「はい」
『晴人(はると)!」
可愛い声が聞こえた。名前を言われなくても分かる。
「こんにちは、晴人」
大桃 琴音(おおもも ことね)。俺と同い年の女子大生で彼女。
「はい、どうぞ!」
琴音は、そう言って箱を渡す。開けてみると、パウンドケーキが入っていた。砂糖の甘い匂いが広がる。
琴音は、いつも俺に菓子を作ってくれるのだ。
「ありがと。いつもわりぃな」
「そんなことないって! 晴人は、いつも勉強教えてくれてるでしょ! だからお礼!」
なんて可愛いことを言うんだ、そういう笑顔も反則だっつーの、と言ってしまいたいぐらいに、琴音は可愛い。
勉強を教えてくれてる、だなんて俺だって勉強をしていることになるし、琴音が頼ってくれると、俺も嬉しい。
俺と琴音は、同じ大学に行っていて同じアパートに住んでいる。だから、一緒に大学に行くこともある。