真っ暗な闇の中にいた俺の前に
突然現れた同い年の女の子。


誰が見ても綺麗な容姿をしている彼女は
明るく真っ直ぐ
太陽のように笑っていた。




だけど、彼女には秘密があった。



そしてそれを偶然しまった俺。



これから始まるのは
そんな俺と彼女の180日の物語―――







【一架Side】


朝日がカーテンの隙間から差し込み、
スズメが朝を知らせるように
チュンチュンと可愛い声で鳴いている。


その姿を見つけようと、
私はベットから降りてカーテンを開けた。



「んーー!今日もいい天気!」


カーテンを開けたついでに
窓も開けて新鮮な空気を取り込む。


今は梅雨が明けた7月。
気温も高くなってきて
カラッと晴れた日が続いている今日この頃。


グーッと腕を上に伸ばして
凝り固まった体をほぐし
一階の洗面所へと向かった。



「あ、お父さんおはよ。」


向かった洗面所には先客がいた。


「あぁ、一架か。おはよう。」


顔を石鹸で洗っているお父さんは
私の方へとそのまま顔を向けた。


「わ!ちょ!
そのままこっち向いたら
石鹸落ちるよ!?」


もこもこに泡立てた石鹸は
私が言った通り、
ぺちゃっと音を立てて床に落ちた。


「ほら落ちた!!」


「あぁ!やっちゃった!
一架!タオル取ってくれ!」


そう言ってタオルを受け取ろうとする
お父さんに


「いいよ、私拭くから
顔流した方がいいと思うよ?」


と、言うと
「あ、そっか」と一家の大黒柱とは思えない
マヌケな声を出して
私の言う通り、顔を洗い始めた。




「ふーー!さっぱり!」


私が床を拭き終えると同時に
顔をごしごしと拭いて
笑みを浮かべるお父さんと
やっとこ視線が交わった。



「ふふ、よかったねー。」


「あぁ。」



そう満足げなお父さんと会話を交わし、
私も顔を洗い始めた。



こんな感じで桜井家の一日は
始まって行く。


整った顔をしているけど、
さっきみたいに天然な一面を持つお父さんと
しっかり者で美人なお母さんと
私の3人家族。


すっごく仲良しで
笑いが絶えない家庭。


近所さんからも
会うたびに『仲良しねー。』と
声を掛けられるくらい。


そんな私達家族だけど、
もうすぐ離れ離れになってしまう。






まぁ、離れてしまうのは私だけだけど。


だから、それまで
精一杯、今を楽しむって決めたの。


残された時間、
泣いているよりも
笑っていた方が絶対にいいでしょ?





なんて、考えるようになったのは
あることがきっかけ。



それは今から3年位前の事―――




中学2年になったばかりの私は
毎日部活動に追われていた。



私が所属している吹奏楽部は
全国のコンクールで賞を獲るほど
成績優秀。


そんな中で私はフルートを担当していた。



そして今日も早起きして
朝練へ向かおうと着替えようとした時、



「…?なんだろ、これ…。」



ふと腕を見れば白い斑点のようなもの。


外部活ではない私は
肌は焼けていなくて白い。


でも、それ以上に白い斑点が
腕に何個か出来ていた。



ぼーっとそれを眺めていると


「一架ーー!遅刻するわよーー!」


下からお母さんの呼ぶ声がして
時計に目を移すと朝練開始の20分前。


「やば!!」


遅刻しそうになり、
慌てて準備をしていくうちに
この斑点の事なんて
すっかり頭から抜け落ちていた。


最初の斑点に気付いてから1週間くらい経った頃。


「なんだろう、大きくなってる気がする。」


小さかった斑点が
花のように広がっているように見えた。


なんとなく気になった私は
学校から帰りお母さんに相談した。



「ねぇ、お母さん、これ見て。」


斑点が出来た腕をお母さんに見せると
「なにかしらね。」と首を傾げた。


「痛くもかゆくもないんだけど、
なんとなく気になって…。」


「そうね…。
明日、病院に行ってみましょう。」




こうして、お母さんの提案で
私は近くの総合病院の
皮膚科を訪れた。