クラスで私に話しかけてくるのは、席が近いこの木下さんくらいだ。

別にいじめられているわけではないし、無視されているわけでもない。

ただ何となく馴染めず浮いている、何を考えていのか分からない。きっと私はそんな存在だ。

ほら、もう2人は私のことなんか忘れて違う会話をしている。

どうせまた、くだらない動画の話しでもしてるんだろう。私には何が面白いんだかさっぱりわからないけれど。


私はまた1人。


1人に慣れてしまったのか、さっきみたいに突然話しかけられると戸惑ってしまう。だから相手が満足するような言葉が出てこない。

だから、誰も私に話しかけて来なくなる。

そんな感じで、いつの間にか1人が楽になっていた。ヘタにコミュニケーションを取り嫌われるより、マシ。

こんな時私がすることはタブレットをいじることか、絵を描くこと。

今は描きかけのデッサンがあったことを思い出し、机の中のスケッチブックを取り出す。

柔らかめの鉛筆を画用紙の上にすべらせると、その滑らかな感触が腕から伝わってくる。

集中すると、スッスッスッと流れるように手は動く。スッスッス……ふと気がつくとその手の動きは止まっていた。


そうだ……そうだよね。何でこんなことに気づかなかっんだろう。

私が絵を描くことが好きだなんて、きっとこのクラスの誰もが知っている。

私を絵描きマンだと言った奥本くんが特別なわけじゃない。

私はいつでもここでこうして絵を描いているんだから。