英語の課題が終わった頃には日付を超えていた。開けっ放しのドアから見える、ベッドから落ちそうな体制で寝ている空を起こさないように静かにお風呂に入る。

湯船にゆっくりと浸かっていると、色々なことが頭に浮かんででくる。

小椋くんの弾けるような笑顔。私の絵をきれいな空だと言ってくれた優しい低い声。

ユラユラと漂う水の中。

自分の気持ちに逆らわずに身を任せて漂っていたい。普段、人に合わせることが苦手の私。小さい頃からマイペースと言われ続けている。それでも、今回はそんな簡単にはいかない。

このまま小椋くんに対する気持ちを閉じ込めてしまうことも、今ならばまだできる。

でも、それでいいの?

『俺らしいって、なんだ?』

イチの呟きが、私の思考と重なる。

『自分の気持ちに正直に』

イチのために呟いたけれど、正にそれは今の自分自身に言えることで……。

私らしいって、なに?

そんなこと、考え始めてしまったら思考回路がやられる。

思い切りシャワーを顔から浴びていらない気持ちだけ、洗い流したい。

部屋で髪を乾かしながら、明日の時間割の確認のためにタブレットの電源を入れる。

するとSNSのアプリに新しい通知があるのが見えた。イチかもしれない。

開くとそこには、今まで見たことのない通知の表示があった。

アプリ内に自分宛のメッセージがある、その知らせだった。

びくんと心臓が跳ね上がる。

個人的に誰かが私にメッセージを送ってくれている。

誰?ひょっとしてイタズラ?

震える指が、メッセージボックスをタップする。