夕飯を終えて部屋に入ると、ベッドに寝転んでタブレットの電源を入れる。待ち受けには朱里のサンマの絵。

授業中にこの画面を木下さんに三度見ぐらいされたことを思い出した。今度説明しておかなくちゃ、サンマ好きな変なヤツだと思われているかもしれない。

やらなきゃいけない課題があったが、迷いなくSNSのアプリを開く。

『フワフワした気持ちは、始まりの予感』

恋の、と打とうとしたが何となく恥ずかしくてやめた。まだ、自分が抱いているこの気持ちが恋なのかどうか、分からないでいた。

ただ、他の人に対する緊張と、小椋くんに対するドキドキは、種類が違う、そう感じているのは確かだった。

そしてもう習慣になっているイチの投稿をチェックする。今日は久しぶりの晴れ間、こんな日にはきっと明るい呟きがあるだろう。

『青い空がきれいだった』

ふふ、だよね。そうだよね。

やっぱり空は晴れて青い方がいいよね。

しかしイイねボタンを押そうとした手がふと止まる。

『俺らしいって、なんだ?』

1つ前にあげられていた呟きだ。

寝転んでいた体制から、起き上がり壁にもたれて深呼吸をする。

迷いなくイイねボタンは押した。

『俺らしいって、なんだ?』

『青い空がきれいだった』

久しぶりに感じるイチの心の痛み。俺らしい?私らしい?なんだろう。

イチのそれと、私のそれはもちろん違っていて。それでも悩みはとても近くて。胸がギュッとなる。

自分らしいってなんだろう……そうだ。

『自分の気持ちに正直に』

フワフワしている私に朱里が言ってくれた言葉。

私の浮いた気持ちとは違うかもしれないけど、自分らしくってことは自分の気持ちに正直になるってことと繋がる気がした。

これを見て、少しでもイチが何かを感じてくれたらいい。

「ねーちゃん、先風呂入るよ」

ドアの前から空の声が聞こえる。

「はーい」

慌てて英語の課題に取り掛かる。