「うん、一回戦はなんとか勝ったけど。次で負けちゃった」

「そっかぁ、惜しかったね」

「うん」

惜しくもなんともない。むしろ丁度良かった。一回は勝つ気分も味わえたし、決勝まで進んだりしたら余計に熱が入って面倒だ。

朱里だって、私がそう思ってることは分かって言ってる。

「オレはサッカー準優勝!」

「ほんと?それこそ惜しいじゃん」

「まあな、でも最高盛り上がったぜ」

「だろうねー」

琥太郎は野球部だ。

うちの学校の特別ルールで、球技大会では自分の入っている部活以外の種目を選ばないといけない。

公平に、そして普段しないスポーツに親しむのが目的らしい。まあ、分からなくもない。

お祭り騒ぎが大好きな琥太郎なら、どんな競技だって全力で楽しめるだろうけど。張り切ってボールを追いかけている姿が目に浮かぶ。

「虹、今日部活行く?」

「うん、行くよ」

「じゃ、私も行こうかな」

うちの学校の美術部は基本、自由参加だ。描きたければ描いたらいい、描きたくなければ描かないでいい。

生徒主体、気分主体のそのスタイルも気に入っているうちの1つだ。コンクールだって、出したければ出したらいい。出したくなければ出さなくていい。

悪く言えば、ゆるい。

よく言えば、自由だ。