フワフワとした気持ちは久しぶりだ。久しぶりすぎて、私がこんな気持ちを持てることすら忘れてた。

自己紹介をした彼は、まっすぐに私の目を見つめていた。

あんな風に相手の目を見て話すことなんて、自分に自信がないとできないことだ。その証拠に、私は相手目を見ることはない。

そりゃ、背も高くてイケメンで……て自信もつくよね。所詮、私とは違う。

教室へと戻ると、私に気づいた木下さんを含めた数人の女子が寄ってきて、口を揃えて大丈夫かと聞いてきた。

「あ、うん。薬飲んで寝たら治った。木下さん、ありがとうね」

「そっか、よかった」

イケメンに会ってフワフワしてますけど、なんて言えやしない。

他の女子はすぐに別の話題を始める。ま、そんなもんだよね。

でも、木下さんは私の席に来て、前の席の子の椅子に座る。

「ママに聞いたら、やっぱり気圧が下がってるんだって」

「ああ、やっぱり」

「ママも頭痛がするから、薬飲んで休んでるって言ってた」

「そっか……大丈夫かな」

優しいんだな、木下さん。お母さんの心配して。

「木下さんは?偏頭痛とか、ないの?」

そういうのって遺伝したりしないのかな。

「アタシは全然平気!鈍いところはパパ似」

顔の前でヒラヒラ手を振りながら笑顔で私の質問に答える。

「あはは、そうか」

私もつられて笑顔になってるかな。彼女の、屈託のない言葉選びと笑顔。

「ほらー席に着けー」

いつの間にか始まっていた授業に、木下さんはは慌てて自分の席に戻って行く。

私も、もう少し自分に自信が持てたなら、小椋くんや木下さんのように笑えるのだろうか。