そうだよ、桜を見に来たの。

「あ、もしかして俺に会えると思ってきてくれた?」

違う!!そんなわけない!!

首をブンブンっとこれ以上ないほど左右に振ると、藤原くんは「ははっ!」と声を出して笑った。

「そこまで否定されると傷付くんだけど」

藤原くんはちょっぴり唇を尖らせたあと、じっとわたしの足元を見つめた。

「てかさ、体操座りはマズくないか?反対側からじゃ丸見えかもよ」

いぶかしげな藤原くん。

ああ、それなら大丈夫だよ。この間と同じ失敗はしないから。

「大丈夫なのか、それ」

いまだに心配そうな藤原くん。

大丈夫、の意味を込めて大きくうなづく。

「あっ、ちょっと待って」

藤原くんはそう言うと、学校指定のバッグをごそごそと漁り、袋を取りだした。

その中には新品のメモ帳とキャラクターもののボールペンが入っている。

彼はボールペンの袋を破き、わたしにそっと差し出す。

「これでさ」

「……?」

「俺と会話しよう。俺と結衣、二人っきりで話そう」

トクンッと心臓が鳴る。