「あの、ね」

そう言う私に、結菜は反応しない。

「約束を守りたかった。だから、話をしにきたの」

一気にそう言うと、結菜はこくんと小さくうなずいた。
こんな状況のなか言うことじゃないことはわかっていた。

和宏のことが好き。
でもそう確信したときに、結菜との約束を果たすべきだと決心した。

「私ね、和――」

「フラれちゃった」

言いかけた私に、結菜ははっきりと口にした。

「え?」

見ると結菜はなぜかほほ笑んでいたからもっと驚く。

「言ってなかったけれど、昨日の夜ね、和宏くんに告白したんだ」

「そんな……」

横顔の結菜は首をゆっくり振った。

「一瞬で断られたよ。『そんなふうには思えない』って。ちょっとくらい悩んでくれてもいいのにね」

あはは、と笑ってから結菜はサッと顔を伏せた。無理しているのが痛いほど伝わってくる。