長いように感じた梅雨も明け、高校2年の1学期も終盤に差し掛かった初夏の頃。
窓の外は太陽がギラギラと輝いていて、これからもっと暑くなるというのだから信じられない。
廊下に出ると、あと1カ月もしないうちに訪れる夏休みを前に、友達同士で集まって予定を立てる人や、部活の話をしたりする人で溢れていて。
誰もかれもが夏休みを楽しみにして、浮足立っているように見える。
そんなたくさんの人の笑顔と笑い声で溢れる廊下の一本道。
控えめに、誰の邪魔にもならないよう、端っこの方をひっそりと歩くのはいつものこと。
クラスで浮いているわけではない。
イジメられているわけでもない。
多くはないけれど友達だっている。
だけど時々、なにかから耐えられなくなって、一人になりたくなる時がある。
「ここは静かだなぁ……」
そんな時、決まって自然と足が向いてしまうのは、裏庭の大きな桜の木の下だった。
春には桜が満開だったけれど、今では緑の葉が生い茂り、地面に作る大きな影がその堂々たる様を表していた。