明美は走って少女の元へ戻って行く少年を見つめた。

あの頃、明美も同じようにむぎわら帽子を飛ばしてしまった。

風に乗りどこまでも遠く飛んで行くむぎわら帽子。

旦那が追いかけようとしたけれど、海の方へと飛んで行った帽子には間に合わなかった。

お気に入りの帽子だったからショックだったけれど、その直後旦那から永遠の宝物を貰ったんだ。

『僕たち、結婚しよう』

そう言って、明美の指に婚約指輪をはめてくれたのが、この砂浜だった。

思い出すと、自然と涙が流れていた。