「さ、食べて食べて!」

「い、いただきます……」

「フンッ」


 青司くんに促されて、わたしと黄太郎はキーマカレーをさっそく一口すくう。


「……ん! 美味しい!」

「腹が減ってたからな。ちょうど良い……」


 ぶつくさ言いながらも、黄太郎はちゃっかりご飯部分をかっこんでいる。

 相当お腹が減っていたのだろう。

 怒るとお腹が減るし、逆にお腹が満たされれば怒りは治まる。

 これで少しは穏やかに話ができるといいんだけど……と思いながら青司くんを見ると、ちょうど野菜ジュースのパックを開けているところだった。


「あ、良かったらこれもどうぞ」


 そう言って、オレンジ色の液体が満たされたグラスが置かれる。


「ふ~。これがカレーの中に入ってるんだよね……言われないとちょっとわからないね」

「でしょ。でも美味しくなるんだ」

「青司、俺はどちらかというと水をもらいたいんだが」


 遠慮なくジュースを飲み干してから、黄太郎がそんなことを言う。


「はいはい。黄太郎、こっちもどうぞ」


 別のグラスに水が注がれ、それがまたわたしと黄太郎の前に置かれる。

 黄太郎はごくごくとそれを飲んだ。


「昔から辛いの苦手だよね。これ、女性も食べやすいようにってそんなに辛くしてないつもりなんだけど……」

「うるせえな。苦手なものは苦手なんだよ!」


 黄太郎は水を飲み干して二杯目の水を所望している。

 たしかにわたしも食べたけどそんなに辛くはなかった。でも、昔から黄太郎は辛いのが苦手だ。ちょっとでも辛いとすぐにひーひーしてしまう。

 舌が繊細というか、どんな食べ物も濃い味だと無理なようだ。


「カレーの部分が多いなら、わたしが食べてあげようか?」

「お、助かる」


 助け船を出すと、いきなり間に青司くんの手が伸びてきた。


「ん?」

「どうした青司」

「多いなら俺が引き受ける。真白が食べなくていいよ」


 そう言われて、わたしも黄太郎も一瞬ポカンとなる。

 え、これ、まさか……。