出会った頃は当たり前のように聞いていた康平の怒鳴り声だが、今では珍しい。
「笑う暇があるなら早く自分を拭け! 風邪引く前に服を脱げ!」
「凄い、康平が叱ってる」
 感動する勇也に、
「あのなあ」
 康平がイライラするように片手で髪を掻き乱した。
「心配されたくなきゃ、二度とずぶ濡れになんな」
「いやいや、ありがたいよ。すっごく嬉しい。康平に本気で心配されるなんて、すべての運を使い果たした感じだ」
 勇也はウキウキと靴を脱いだ。体が重くなければ、飛び跳ねただろう。
「靴下脱いで足拭いたら即行で脱衣室行け。脱いだ服は洗濯機に放り込んでシャワー浴びてこい。着替えは貸してやる」
「ありがと。でも、洗濯はいいや。これは捨てる服だからビニール袋に入れてく。着替えと一緒にいらないビニール袋も置いといて。うおっ、寒っ。もう限界だ」
 靴下を脱いだ勇也は、タオルの上で二度足踏みすると、脱衣場へ走った。