小さい頃から毎日のように顔を合わせていたのに、とても久しぶりに会うような気がするのはどうしてだろう。

 もう二度と会えないような不安に駆られていたのはどうしてだろう。


「いいよ、悲しいときは泣いたらいい。花穂はいつも頑張りすぎなんだよ」

 ほら、とリョウちゃんは私の顔の前で合わせた両手を広げる。

 するとそこには、私の好きなレモン味の飴が乗っていた。


「……いつの間に」

 思わず私の頬が緩むのを見て、リョウちゃんも少し安心したように笑う。


「……いつも、この飴に元気づけられてたね、私……」


 お母さんと喧嘩したときも、上手く友達の輪に入れなかったときも、リョウちゃんと同じ高校を受けたはいいものの結果を見るのが不安でたまらなかったときもそうだった。

 私がどんなにマイナスな気持ちを隠そうと笑っていても、リョウちゃんはめざとく私が弱っていることに気づいて、この飴をくれてたんだ。


 私はいつもリョウちゃんに、このレモン味の飴をもらっていた。

 いつからだったかは覚えてない。

 そして、このことは何となく恥ずかしくて、私とリョウちゃんの二人だけの秘密にしてもらっていた。


「そうだね。いつも花穂のために持ち歩いてたから」

「知ってる。だって、いつも持ち歩いてるのに、リョウちゃんがこの飴を食べてるところは、見たことがなかったもん」