「欠員が出たところで、俺の他にも補欠はいるじゃん。俺が選ばれるとは限らないよ」

 『ぬか喜びさせないで』と、俺を揺する蒼ちゃんの手を握って止めた時、制服のポケットに入れていたスマホが震えた。

 右手をポケットに突っ込んでスマホを取出し画面を見ると、『母』の文字が表示されていた。

 合否の確認の電話だろうか。自分の口から言うのが辛いため、ネットで調べてくれないだろうかと、自分の実力不足で不合格だったくせに、母に苛立ってしまう。

 「ちょっとゴメン。電話出る」

 3人に断りを入れ、しぶしぶスマホの通話ボタンをタップする。

 「…はい」

 『岳、補欠だったでしょ』

 ネットで俺の合否を知っただろう母が、わざわざ俺にも確認の電話を入れてきた。

 「…うん」

 『結果が分かっているなら電話なんかよこすなよ』とイライラが増幅。