授業が終わるチャイムが鳴り、先生が教室を出て行った瞬間に、

 『オイ‼ 蒼ちゃん‼』

 拓海とマルオと俺とで『笑かすなよ‼』と蒼ちゃんの席を囲んだ。

 「イヤイヤイヤ、がっくんも悪いだろ。なんで俺が臭いんだよ‼ キレそうになったわ」

 『しっかり制汗剤付けてるっつーの‼ シトラスフローラルじゃ、コノヤロウ』と、蒼ちゃんが俺の頭を鷲掴み、自分の脇に近付けると、

 「確かにそう‼ がっくんがわけの分からんタイミングで【臭い】とか言うから、俺まで笑ってしまったんじゃん」

 拓海も加勢して、俺の顔を蒼ちゃんの脇に押し付けた。

 「待て待て待て待て‼ マルオだって悪いだろ‼ 何だよ【蒼ちゃんの臭さで、俺が拓海に殺される】って。笑わせに来てるじゃん‼」

 『悪いのは俺じゃねぇ』と標的をマルオに変えようとすると、

 「それは、拓海が急に殺害宣言するからじゃん‼」

 マルオが『元凶はあっち』と拓海を指差した。

 「えー‼ 俺⁉ 違う違う‼ そもそもは蒼ちゃん‼」

 拓海がマルオの人差し指を握り、蒼ちゃんに向けた。

 「そうだ。蒼ちゃんが授業中に、聞いたこともない声を出したのが悪いんだ‼」
 
 俺も人差し指を蒼ちゃんの方向へ。

 「蒼ちゃん、何があったの?」

 マルオが蒼ちゃんに向かって首を傾げてみせた。