しょんぼりしながら、拓海のドラマの情報を読んでいると、
「拓海、高校教師役なんだー。アイツが本当に高校教師だったら、JKとおかしな事になってクビになるだろうなー。拓海、モテるからなー」
背後から声がして、事務所には自分しかいないと思い込んでいたから、
「ゴホゴホゴホ」
ビックリしてクッキーを喉に詰まらせ、粉を吹きながら咳き込んで振り向く。
「大丈夫?」
そこにいたのは、蒼ちゃんにそっくりな男の子だった。
変な気管に留まっているクッキーをコーヒーで流しこみ、
「気付かなくてすみません。バイトの方ですか?」
その男の子に話し掛けた。
ウチの会社には、日雇いだったり短期雇用だったりの作業員が結構いる。『今日、バイトさんが来る事聞いてないんですけど。おかげで独り言聞かれたやんけ』と、連絡し忘れただろう作業員に少し腹を立てていると、
「バイトじゃないです。佐波野ミソノさん、俺の代わりにシナリオを書いてくれませんか」
蒼ちゃん似の男の子が、私の秘密を口にした。