「めっちゃいいお父さんじゃん」

 「拓海の親だけあって、イケメンだしな」

 マルオに『うんうん』と同意すると、

 「俺、自分の父親を『悪い』とも『不細工』とも言った事ないけど。カッコ良くて未だにモテるから割と自慢」

 拓海が、きっと父親がここに居たら恥ずかしくて言えなかっただろう言葉を口にしながら胸を張った。

 「俺、拓海の家の近くで、拓海のお父さんが近所のおばさんから『田舎から大根がたくさん送られてきたのでお裾分けですぅー』って色目使われてて、それを見た拓海のお母さんが臍曲げちゃって、ちょっと揉めてたの見たことあるわ」

 だから、蒼ちゃんが拓海のお父さんのモテエピソードを話すと、

 「気を引くためのアイテムが大根‼」

 『ブフォ』と変な鼻息を吐きながらマルオが笑った。

 「1本丸ごと漬けてたくあんにして持って来たらもっと面白かったのに」

 マルオに乗っかる俺に、

 「それを『ピクルスですぅ』って言い張って押し付けるっていう」

 更に蒼ちゃんが被せる。

 「ピクルスって漬物って意味だから間違ってないじゃん。まぁ、たくあんをピクルスって言われたらなんかイラっとするけどな。つか、もうウチの話はいいから、蒼ちゃんの部屋に布団持って行こうよ」

 自分の親の話でふざけ続けられるのがウザかったらしく、拓海が『移動するぞ』と俺らを促した。