「あっつ・・・」
九月半ばだっていうのにまだまだ暑い。
制服を着ているのも憂鬱なくらい。
おまけに雨が降って
ジメジメ蒸し暑いったらありゃしない。
時間ぎりぎりに登校すると、
教室内はいつにもまして賑やかだった。
「何?何の騒ぎ?」
一つ前の席の親友、
中村亜紀にそう問いかけると、
亜紀は嬉しそうに私を見た。
「聞いて。今日このクラスに
転校生が来るんだって!」
「転校生?」
「そう!しかも……男の子なんだって!」
「……へえ」
男か……。
どうりで男子軍は不貞腐れてるわけだ。
この女子の盛り上がりっぷりを見て
意気消沈したんだろうね。
転校生か……。
どんな奴かな?
三年の九月。
そんな際どい時期に転校ってことは
何かしらの訳アリってとこね。
机に頬杖をついて窓の外を眺める。
転校生が来たところで、私の日常は変わらない。
そう思っていた。
「皆席につけ~。転校生を紹介するぞ~」
担任の倉ちゃんこと、
倉本先生が大きな声でそう言った。
みんなが静かに席に着くと、
先生が廊下に向かって手招きをした。
「さあ、転校生だ。皆に自己紹介してくれ」
その時だった。
転校生なんて関係ない。
そう思った私の目に飛び込んで来たのは……。
「佐々木陸です。よろしく」
私の目に飛び込んで来たのは、
懐かしのあの顔だった。