顔を上げると、
そこには可愛らしい女の子がいた。


ふわふわのショートカットで目の大きな女の子。


そう。
私もこういう感じで女の子になりたかったんだよ。


理想の女子像が今まさに目の間にいる。


「初めまして。あたし麻生由紀乃。
 よろしくね♪」


「わ、私は二宮若葉。
 よろしく……由紀乃ちゃん」


「呼び捨てでいいよ。ニノ」


“ニノ”かぁ。
女の子はこんな可愛い呼び方するんだね。


由紀乃は私を見てニコニコした。


「ニノは部活何にするか決めた?」


「まだだけど……由紀乃は?」


「私はね~野球部のマネージャーになりたいんだ」


ああ、由紀乃にぴったり。


こりゃあ野球部員たちは嬉しいんじゃない?


部活かあ。何にしようかな。


中学では一応バスケをやっていたけど、
違うものもアリかな。


「私は……陸上部にしようかな」


「陸上!?かっこいいんだね、ニノ!」


“かっこいい”か。
やっぱり私にはそっちの方が似合ってるのかな?


「あ、チャイム鳴った!ニノ、またね!!」


「はーい」


由紀乃かあ。いい子そうだし、
一緒にいると楽しいかも。


とりあえず一人きりじゃなくて良かった。


眼鏡をかけた男の担任が入ってきて、皆が席についた。


私が窓の外を眺めていると、
また誰かが机をノックした。