「お前、何してんだよ。迷子になるだろ」


「陸、遅いよー」


「悪い。それよりこれ」


「えっ?」


陸は笑って手を差し出した。


掌にあったものは……。


「お守り……?」


「そう。受験が上手くいきますよーに!って
 願掛けしておいた!」


「陸……ありがとう」


推薦でもう西高合格が決まっている陸と、
ぶっちゃけギリギリな受験生の私。


本当に不釣り合いだなぁ。
自分でも笑っちゃうよ。


でも、陸もいろいろと考えてくれてるんだって知れて、
ちょっと嬉しかった。


だって、こんなことされるの、初めてだもん。


私たちはお参りをして帰り道を歩いた。


私の家と陸の家は正反対な方向にある。


昔は玄関に入るまで一緒だったのに、
今じゃ私と陸の家の中間地点。


交差点で分かれなければいけない。


それが少し寂しい気もするんだ。


もう少し一緒にいたいと思うようになったの。


いつしか“嘘”への罪悪感が薄れ、
ただひたすらにこの幸せな日々を実感していた。