「それーーーーまさか、父が好きだった人ってーーあなたのお母さん?」
嘘ーー。
こんな偶然、ある?
もう一つの茶色の本が、何よりの"証拠"。
古びた同じ詩集。
開いた箇所を、目を細めて見た。
「今でも君を、愛してる」
やっぱり、同じ本だ。
だけどーーなら、何故。
「なんで、あんたがそれ届けるの?
本人にーー」
その先は言えなかった。
君が泣いているから。
「なんで、泣くの?
私、なんか変なこと言った?」
人生初に、男の子泣かしてしまいました。
天国の父へ。
ごめんなさいーー。
「母さんは、空に昇って降りて来られないからーーずっと寝たきりだった。
心臓が悪かった母は、大好きな人に会えないまま、息を引き取った。
ごめん、君が悪いんじゃない。
だけどーーこれだけはわかって。
悲恋なんかじゃなかった。
母さんも、逢いに行きたかったんだっ」
君の涙が物語る。
わかったから、泣き止んで。
私が、悪かったから。
私は、君を抱き締めた。
「ごめんね、届けに来てくれてーーありがとう。ちゃんと、受け取ったよ!!
ひどい事言ってごめんなさいっ」
"その子もさあ、逢いたくなければ出会わなきゃ良かったのにーー"。
私、最低だ。
きっとーー会いたかった。
逢いに行きたかった。
なのに私、知らないでひどい言葉ばかり。
「逢いに来てくれて、ありがとうっーー」
私達は、互いに抱き締め合い涙を流した。
いつまで抱き合っていたか、せっかくもらった缶ジュースは、炭酸が抜けてただの甘い砂糖。
「夢を、見ていた気がした。
暖かい夢」
私だけ?
「俺もさあ。なんだか心地よかった。
美織ちゃん、俺さ。
美織ちゃんに出会うために、生まれてきた気がする」
真剣に愛してる。。
君が背伸びをして、彼の頰にキスをした。
'美織ちやんに、出会うために生まれてきた".,
そんな、風に言われたら。
「キスしたくなっちゃった」
二人だけの秘密基地。
二人だけの特別な場所。
「それって、始めてくれる?
俺と、ここから始めよう!
美織ちゃん、好きだよっ!」
君が好き。
想いは溢れる。
決して無くならない。
「うん、好き。
だから、名前教えなさいよ」
少し、ツンデレだけど。
甘い君の、ほんの一部だ。
まだまだ知らないことだらけだ。
俺達はここから始まった。
古びた図書館。
誰も居ない二人だけの世界。
母さんが出来なかった"恋"をーーーー
今、始めよう。
身体が弱いとか、関係ない。
ねえーーそうでしょ?
残された時間が後一年あるならばーー
君と。。
「俺は、安西 奏(アンザイ カナデ)」
後ーーーー、一年しか生きて行けないと宣告されようとも。
君と、歩んで行きたいは変わらない願いだよ。
「奏、ステキな名前だね!」
奏でると書いてカナデ。
「奏のお母さんって素敵な人だったんだろうな。
会って見たかった」
「俺はいつか、死んだら1番に逢いに行くって決めてる」
ごめん、、後一年、一緒に居たい。
気づかないで、俺の気持ちにーー。
「奏の1番になりたい!」
とっくに1番だよ。
「あれ?なんか、顔色悪いよ?
大丈夫?」
気づかないで、俺の変化にーー。
「あー、今日暑いからかな!」
日差しに目が眩みそうになる。
ねえーー美織ちゃん。
「好きだよ、一年後も、ずっと一緒に居たい」
だけどさあ、確実に蝕まれて居たんだ。