ユストは姿を消した男にそう語り掛けると何事もなかったかのように外へ出た。店の外は相変わらず騒然としていた。
 火が放たれた建物から逃げ出してきた人々を亜人たちは容赦なく殴り倒し、動かなくなるまで殴り続けている。積み上げられた人間の死体が燃え上がり、火柱が上がっている。その火柱の中にまだ生きている人間が放りこまれていく。
 衛兵らしき武装した集団と亜人の集団が殺し合っている。鎧兜に身を包み、剣や槍や銃を手にした者たちを相手にしているのに、形勢は亜人たちの方が勝っているようだった。
 人間は亜人たちに劣る。美しさや弓の腕はエルフたちに敵わず、単純な腕力ではオーガたちに勝てるわけもなく、ビーストの身体能力にもドワーフたちの金属加工の技術にも勝つことができない。
 逃げ惑う人間。追い立てる亜人たち。追い立てる亜人たちの首には首輪がはめられている。
 魔法の首輪だ。人間に逆らおうとすればその首を絞め、亜人たちを絞め殺す物だ。
 だが、誰も苦しんでいない。亜人たちは人間に逆らい、暴行し、殺害しているのに誰も絞殺されてなどいない。
 なぜか。理由はある。
 この魔法の首輪には欠陥があるのだ。
 奴隷を縛る首輪は装着者の感情に反応する。それは主に対しての怒りや憎しみなど、主人に対して害になる感情である。
 感情に、である。
 では、もし装着者に感情が無かったら。
 悲鳴を上げている。襲い掛かってくる亜人に恐怖し悲鳴を上げる。
 怒声を上げている。襲い掛かってくる亜人に声を張り上げ罵っている。
 雄叫びを上げている。襲い掛かってくる亜人に立ち向かおうと自らを奮い立