【1-4 崩壊の足音】
ユストはスーツケースの中からヒモで縛った羊皮紙を取り出すとヒモをほどいてテーブルの上に開く。それは離れた場所にいる相手と情報をやりとりすることのできる魔法が施された『メッセージスクロール』だ。
時刻はすでに夜。ゆらゆらと揺れる魔法の明かりがテーブルに広げたメッセージスクロールとスウェンの顔を照らしている。レリナはその部屋の奥の方で横になっている。だいぶ疲れていたようで、なにも敷いていない硬い床の上だというのに構わず寝息を立てている。
ユストはメッセージスクロールに視線を落とす。テーブルの上にそれを開いたとき、そこにはなにも書かれていなかった。しかし、開いてからしばらくすると文字が浮かび上がってくる。
「交渉は決裂。次の会談の予定は無し。まあ、予想通り、予定通りですね」
浮かび上がった文字の列は聖都から派遣された使節団と王国との交渉がどうなったのかが記されている。
交渉は失敗。意見は終始平行線。互いの意見をぶつけ合うだけでなんの成果も得られず、ということらしい。
と言うことは、いつも通りと言うことだ。今回のような聖都と王国の交渉は何度か行われてきた。そして、毎回今回と同じ結果が繰り返されてきた。
だが、今回は違う。
「予定通り。ええ、予定通りです」
これまで何度も聖都と王国は交渉を重ねて来た。だが、王国は何度言っても聞き入れなかった。亜人たちを解放しようとはしなかった。
そして、それも今回で終わりだ。これ以上の交渉は無意味だ。
「さて、明日に備えて寝ましょうか」
ルエズス教は亜人の人権を認めている。彼らも神の恩寵を請ける権利を有していると説いている。その主張をポルス王国は受け入れようとしない。
なぜか。理由は簡単だ。
ユストはスーツケースの中からヒモで縛った羊皮紙を取り出すとヒモをほどいてテーブルの上に開く。それは離れた場所にいる相手と情報をやりとりすることのできる魔法が施された『メッセージスクロール』だ。
時刻はすでに夜。ゆらゆらと揺れる魔法の明かりがテーブルに広げたメッセージスクロールとスウェンの顔を照らしている。レリナはその部屋の奥の方で横になっている。だいぶ疲れていたようで、なにも敷いていない硬い床の上だというのに構わず寝息を立てている。
ユストはメッセージスクロールに視線を落とす。テーブルの上にそれを開いたとき、そこにはなにも書かれていなかった。しかし、開いてからしばらくすると文字が浮かび上がってくる。
「交渉は決裂。次の会談の予定は無し。まあ、予想通り、予定通りですね」
浮かび上がった文字の列は聖都から派遣された使節団と王国との交渉がどうなったのかが記されている。
交渉は失敗。意見は終始平行線。互いの意見をぶつけ合うだけでなんの成果も得られず、ということらしい。
と言うことは、いつも通りと言うことだ。今回のような聖都と王国の交渉は何度か行われてきた。そして、毎回今回と同じ結果が繰り返されてきた。
だが、今回は違う。
「予定通り。ええ、予定通りです」
これまで何度も聖都と王国は交渉を重ねて来た。だが、王国は何度言っても聞き入れなかった。亜人たちを解放しようとはしなかった。
そして、それも今回で終わりだ。これ以上の交渉は無意味だ。
「さて、明日に備えて寝ましょうか」
ルエズス教は亜人の人権を認めている。彼らも神の恩寵を請ける権利を有していると説いている。その主張をポルス王国は受け入れようとしない。
なぜか。理由は簡単だ。