愛し合うことに疲れ果てて、二人はまた眠ったようだった。目が覚めたらもう8時を過ぎていた。
腕の中の結衣を揺り起こす。
結衣は目を開けて俺を見つめている。
優しい目をしている。
思わずキスをしてしまう。
おはよう!
今日から2泊3日の新婚旅行に出かけることになっている。
今は店が大事な時だから長くは休めない。結衣も短くていいというので、車で近場の温泉に行くことにした。
最初のドライブから、二人でいろんなところへ車で出かけたが、宿泊したり、ラブホテルに入ったりはしなかった。俺は人のいないところで結衣を抱き締めてキスをすれば十分だった。
結衣を抱きたいとは思わなかった。それよりこの再会を大切にしたいという思いの方が強かった。
いや、今思うと地味な結衣ではなく、きっとあの絵里香を抱きたかったのかもしれない。
ホテルはゆっくり出ればいい。目的の温泉地の回りをひととおり観光して、チェックインの時間になったらすぐにホテルに入って二人でゆっくりしたいと思っている。
昨日は結婚式、披露宴、2次会と忙しくて疲れた。それに母親からの告白で始まる前から疲れた。それでやるべきこともできなかった。
結衣が着替えをして出発の準備をしている。
「今日は地味な結衣じゃないんだね」
「ええ、これからは仕事をしている時以外は、絵里香の姿でいたいと思っています」
「それがいい」
「やっぱりその方がいいですか?」
「せっかく、こんなに綺麗で可愛いのにもったいない」
「そう言ってくれて嬉しい。私は絵里香の姿が災いを招いてしまったと思い込んでいました。そして地味になって本当の私を分かってもらえる人を探して彷徨っていました。
それが幸いして、真一さんと出会うことができました。あの時、真一さんは本当の私を分かってくれましたが、私を好きになってはくれませんでした。
真一さんは絵里香の姿をした私を望んでいたのは分かっていました。でも私は地味な結衣にこだわっていました。本当の私を好きになってもらいたかったからです。
でもあんな噂を立てられて真一さんにすごく申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。私は自分の気持ちを満たすことばかり思っていて、真一さんの思いをかなえてあげようと思っていませんでした。ごめんさない」
「結衣は本当の自分は地味な姿だと思っているようだけど、絵里香の姿が本当の結衣じゃないのか? 地味な結衣は仮の姿ではなかったのか? 昨日の綺麗で可愛い結衣はとても嬉しそうで輝いていた。誰もがそう思った。あれが本当の結衣じゃないのか?」
「おっしゃるとおりかもしれません。昨日の私は何かから解き放されて自由になって、本当に自分らしかったと思います。これからは自信をもって絵里香の姿でいられます。ありがとう」
結衣はそう言うと抱きついてきた。俺もそれが良いと思うし嬉しい。
チェックアウトをするために二人でロビーへ歩いて行った。
すれ違う人が皆、結衣を見ている。それほど結衣は輝いていた。
俺も誇らしげに結衣の手を繋いでいる。今日も良い天気でドライブ日和だ。
*******************
チェックインの時間が待ち遠しかった。すぐに部屋に案内された。
結衣が和室の方が落ち着けるというのでこの部屋を予約した。ここは露天風呂が付いてスイートルームになっている。
すぐに温泉に浸かりたいので大浴場へ行くことにした。結衣も大浴場でゆっくりお湯に浸かりたいと言って、浴衣を持って行った。
温泉に入るのは何年ぶりだろう。最後に入ったのが思い出せなかった。大学を卒業して間もないころゼミの同窓会で行ったのが最後だった気がする。
良いお湯だ。温まるしリラックスする。浸かっていると眠りそうになるほどいい気持ちだ。今朝、結衣と愛し合ったことを思い出す。昼間からの温泉は心地よくて最高だ!
部屋に戻ると結衣はまだ戻っていなかった。結衣もお風呂が好きなんだな。
缶ビールを持ってきて喉を潤す。もう車を運転することもないので心置きなく飲める。冷たいビールが美味い。
そこへ浴衣姿の結衣が戻ってきた。髪をアップにして艶めかしい。
「私も」と言ってサイダー缶を持ってきて、俺の横に座って飲み始める。
「温泉、どうだった? お風呂が好きなんだね」
「ええ、お風呂が大好きなんです。前のマンションのお風呂が気に入っていました。大きくて足を伸ばせて最高でした。いつも長い時間入っていました。お風呂に浸かっていて眠ったこともあります」
「そうか気が付かなかった。お風呂が好きだと初めて知った。今度のマンションのお風呂も広くてよかったね」
「良いところを選んでいただけて感謝しています」
結衣が身体を寄せて来るので思わず抱き締めると、もう我慢ができなくなった。
結衣を抱きかかえて寝室に運んだ。結衣はなすがままだ。今朝、愛し合ったばかりなのに、また愛し合う。
*******************
俺は結衣に膝枕をしてもらって、間近に迫る山の景色を見ている。もう紅葉が始まろうとしている。
二人だけの気だるい時間がゆっくりと過ぎていく。お腹が空いた。もう少しで夕食の準備が始まる。
仲居さんに呼ばれていくと、豪華な和食が用意されていた。
二人きりの食事を始める。こんなゆったりした食事は初めてかもしれない。
それもニコニコした結衣がお酌をしてくれる。たわいもない話がとても楽しい。
「食事が済んだらカラオケに行かないか? 確か設備があるとパンフに書いてあった。結衣の歌を久しぶりに聞かせてくれないか?」
「いいですけど、私も真一さんの歌が聞きたいから行きましょう」
食事を終えて一息つくと、結衣は何を思ったのか服に着替えをして化粧もし直していた。
「どうしたの?」
「絵里香の歌を聞きたいんですよね。それならそれにふさわしい服を着たいと思って」
「ありがとう、それなら俺も着替える」
服を着替えて二人はカラオケがあるというラウンジに行った。
個室のカラオケ施設もあったが、ラウンジの舞台の方が良いとそこにした。幸いまだ早い時間なので他に客はいなかった。
結衣は、最初は俺に歌ってくれと言うので「レモン」を歌った。次に結衣も「レモン」を歌った。あのころを思い出す。
「あの時の俺の心境だ」と言ったら、結衣は「私も同じだった」と言った。
それから結衣は「君を許せたら」を歌ってくれた。俺の好きなもう1曲だった。結衣は「私の心境だった。もう思い出の歌になった」と言った。
結衣は俺が好きな「さよならをするために」を歌ってほしいと言った。俺の今の心境の歌かも知れない。
結衣を見つめながら上手く歌えた。歌い終わると結衣が拍手してくれたが、他からも拍手された。
もうラウンジには歌を聞きつけて人が集まってきていた。もう十分、結衣に歌を聞かせてもらった。
二人は満足して部屋に戻ってきた。
部屋に戻るとすぐに結衣を抱き締める。「ありがとう。結衣の歌を聞いて、あの頃を思い出した。あのつらい記憶がよみがえってきて、結衣を抱き締めたくなった。本当に結婚できたんだね。俺たちは」
「私もあの頃を思い出して、今の幸せを噛みしめていました。もっと強く抱き締めて下さい」
二人はどれくらい抱き合っていたのだろう。すぐにでもまた愛し合いたいと思った。
「部屋の露天風呂に一緒に入ろう。身体を洗ってあげよう」
「はい、お願いします」
俺が先に入っていると結衣が恥ずかしそうにして入ってきた。薄明りの中、結衣の白い裸身が美しい。俺の隣に浸かった。
「ここのお湯もなかなかいいですね」
「丁度良い湯加減だ」
温まってきたところで、二人上がって、俺が結衣の身体を石鹸で洗ってあげる。
背中、お尻を洗って、それからこちらを向かせて、胸からお腹、大事なところ、脚と順に洗っていく。
始めは恥ずかしそうにしていたが、こちらを向かせるともう観念したようになすがままになっている。
気持ち良かったから今度は私が洗ってあげると俺の全身を洗ってくれた。確かに洗ってもらうと気持ちがいい。
お互いに身体をバスタオルで拭き合って寝室へ向かう。
俺は冷たい水のボトルを持って来て、二人で同じボトルから半分ずつ飲んだ。
すぐにキスをしてまた愛し合う。
今日はもう3回目だが、結衣となら何回でも愛し合いたいしそれができる。
そして、悲しくて泣いているのか快感からなのか分からないような魂に響くような声が聞こえてくる。
こうして二人の絆が深まって行く。
結衣を幸せにしてやりたい。俺の腕の中でぐったりして眠っている結衣をみてそう思う。
地味子と偽装同棲して、とっても可愛い良い娘と分かった時には逃げられて、ようやく見つけて嫁にする話はこれでおしまいです。
めでたし、めでたし。
腕の中の結衣を揺り起こす。
結衣は目を開けて俺を見つめている。
優しい目をしている。
思わずキスをしてしまう。
おはよう!
今日から2泊3日の新婚旅行に出かけることになっている。
今は店が大事な時だから長くは休めない。結衣も短くていいというので、車で近場の温泉に行くことにした。
最初のドライブから、二人でいろんなところへ車で出かけたが、宿泊したり、ラブホテルに入ったりはしなかった。俺は人のいないところで結衣を抱き締めてキスをすれば十分だった。
結衣を抱きたいとは思わなかった。それよりこの再会を大切にしたいという思いの方が強かった。
いや、今思うと地味な結衣ではなく、きっとあの絵里香を抱きたかったのかもしれない。
ホテルはゆっくり出ればいい。目的の温泉地の回りをひととおり観光して、チェックインの時間になったらすぐにホテルに入って二人でゆっくりしたいと思っている。
昨日は結婚式、披露宴、2次会と忙しくて疲れた。それに母親からの告白で始まる前から疲れた。それでやるべきこともできなかった。
結衣が着替えをして出発の準備をしている。
「今日は地味な結衣じゃないんだね」
「ええ、これからは仕事をしている時以外は、絵里香の姿でいたいと思っています」
「それがいい」
「やっぱりその方がいいですか?」
「せっかく、こんなに綺麗で可愛いのにもったいない」
「そう言ってくれて嬉しい。私は絵里香の姿が災いを招いてしまったと思い込んでいました。そして地味になって本当の私を分かってもらえる人を探して彷徨っていました。
それが幸いして、真一さんと出会うことができました。あの時、真一さんは本当の私を分かってくれましたが、私を好きになってはくれませんでした。
真一さんは絵里香の姿をした私を望んでいたのは分かっていました。でも私は地味な結衣にこだわっていました。本当の私を好きになってもらいたかったからです。
でもあんな噂を立てられて真一さんにすごく申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。私は自分の気持ちを満たすことばかり思っていて、真一さんの思いをかなえてあげようと思っていませんでした。ごめんさない」
「結衣は本当の自分は地味な姿だと思っているようだけど、絵里香の姿が本当の結衣じゃないのか? 地味な結衣は仮の姿ではなかったのか? 昨日の綺麗で可愛い結衣はとても嬉しそうで輝いていた。誰もがそう思った。あれが本当の結衣じゃないのか?」
「おっしゃるとおりかもしれません。昨日の私は何かから解き放されて自由になって、本当に自分らしかったと思います。これからは自信をもって絵里香の姿でいられます。ありがとう」
結衣はそう言うと抱きついてきた。俺もそれが良いと思うし嬉しい。
チェックアウトをするために二人でロビーへ歩いて行った。
すれ違う人が皆、結衣を見ている。それほど結衣は輝いていた。
俺も誇らしげに結衣の手を繋いでいる。今日も良い天気でドライブ日和だ。
*******************
チェックインの時間が待ち遠しかった。すぐに部屋に案内された。
結衣が和室の方が落ち着けるというのでこの部屋を予約した。ここは露天風呂が付いてスイートルームになっている。
すぐに温泉に浸かりたいので大浴場へ行くことにした。結衣も大浴場でゆっくりお湯に浸かりたいと言って、浴衣を持って行った。
温泉に入るのは何年ぶりだろう。最後に入ったのが思い出せなかった。大学を卒業して間もないころゼミの同窓会で行ったのが最後だった気がする。
良いお湯だ。温まるしリラックスする。浸かっていると眠りそうになるほどいい気持ちだ。今朝、結衣と愛し合ったことを思い出す。昼間からの温泉は心地よくて最高だ!
部屋に戻ると結衣はまだ戻っていなかった。結衣もお風呂が好きなんだな。
缶ビールを持ってきて喉を潤す。もう車を運転することもないので心置きなく飲める。冷たいビールが美味い。
そこへ浴衣姿の結衣が戻ってきた。髪をアップにして艶めかしい。
「私も」と言ってサイダー缶を持ってきて、俺の横に座って飲み始める。
「温泉、どうだった? お風呂が好きなんだね」
「ええ、お風呂が大好きなんです。前のマンションのお風呂が気に入っていました。大きくて足を伸ばせて最高でした。いつも長い時間入っていました。お風呂に浸かっていて眠ったこともあります」
「そうか気が付かなかった。お風呂が好きだと初めて知った。今度のマンションのお風呂も広くてよかったね」
「良いところを選んでいただけて感謝しています」
結衣が身体を寄せて来るので思わず抱き締めると、もう我慢ができなくなった。
結衣を抱きかかえて寝室に運んだ。結衣はなすがままだ。今朝、愛し合ったばかりなのに、また愛し合う。
*******************
俺は結衣に膝枕をしてもらって、間近に迫る山の景色を見ている。もう紅葉が始まろうとしている。
二人だけの気だるい時間がゆっくりと過ぎていく。お腹が空いた。もう少しで夕食の準備が始まる。
仲居さんに呼ばれていくと、豪華な和食が用意されていた。
二人きりの食事を始める。こんなゆったりした食事は初めてかもしれない。
それもニコニコした結衣がお酌をしてくれる。たわいもない話がとても楽しい。
「食事が済んだらカラオケに行かないか? 確か設備があるとパンフに書いてあった。結衣の歌を久しぶりに聞かせてくれないか?」
「いいですけど、私も真一さんの歌が聞きたいから行きましょう」
食事を終えて一息つくと、結衣は何を思ったのか服に着替えをして化粧もし直していた。
「どうしたの?」
「絵里香の歌を聞きたいんですよね。それならそれにふさわしい服を着たいと思って」
「ありがとう、それなら俺も着替える」
服を着替えて二人はカラオケがあるというラウンジに行った。
個室のカラオケ施設もあったが、ラウンジの舞台の方が良いとそこにした。幸いまだ早い時間なので他に客はいなかった。
結衣は、最初は俺に歌ってくれと言うので「レモン」を歌った。次に結衣も「レモン」を歌った。あのころを思い出す。
「あの時の俺の心境だ」と言ったら、結衣は「私も同じだった」と言った。
それから結衣は「君を許せたら」を歌ってくれた。俺の好きなもう1曲だった。結衣は「私の心境だった。もう思い出の歌になった」と言った。
結衣は俺が好きな「さよならをするために」を歌ってほしいと言った。俺の今の心境の歌かも知れない。
結衣を見つめながら上手く歌えた。歌い終わると結衣が拍手してくれたが、他からも拍手された。
もうラウンジには歌を聞きつけて人が集まってきていた。もう十分、結衣に歌を聞かせてもらった。
二人は満足して部屋に戻ってきた。
部屋に戻るとすぐに結衣を抱き締める。「ありがとう。結衣の歌を聞いて、あの頃を思い出した。あのつらい記憶がよみがえってきて、結衣を抱き締めたくなった。本当に結婚できたんだね。俺たちは」
「私もあの頃を思い出して、今の幸せを噛みしめていました。もっと強く抱き締めて下さい」
二人はどれくらい抱き合っていたのだろう。すぐにでもまた愛し合いたいと思った。
「部屋の露天風呂に一緒に入ろう。身体を洗ってあげよう」
「はい、お願いします」
俺が先に入っていると結衣が恥ずかしそうにして入ってきた。薄明りの中、結衣の白い裸身が美しい。俺の隣に浸かった。
「ここのお湯もなかなかいいですね」
「丁度良い湯加減だ」
温まってきたところで、二人上がって、俺が結衣の身体を石鹸で洗ってあげる。
背中、お尻を洗って、それからこちらを向かせて、胸からお腹、大事なところ、脚と順に洗っていく。
始めは恥ずかしそうにしていたが、こちらを向かせるともう観念したようになすがままになっている。
気持ち良かったから今度は私が洗ってあげると俺の全身を洗ってくれた。確かに洗ってもらうと気持ちがいい。
お互いに身体をバスタオルで拭き合って寝室へ向かう。
俺は冷たい水のボトルを持って来て、二人で同じボトルから半分ずつ飲んだ。
すぐにキスをしてまた愛し合う。
今日はもう3回目だが、結衣となら何回でも愛し合いたいしそれができる。
そして、悲しくて泣いているのか快感からなのか分からないような魂に響くような声が聞こえてくる。
こうして二人の絆が深まって行く。
結衣を幸せにしてやりたい。俺の腕の中でぐったりして眠っている結衣をみてそう思う。
地味子と偽装同棲して、とっても可愛い良い娘と分かった時には逃げられて、ようやく見つけて嫁にする話はこれでおしまいです。
めでたし、めでたし。