教室の前と後ろの戸からそれぞれ中に入ると、ちょうど授業開始のチャイムが鳴った。

 起立して、礼をして、チャイムの余韻が消える前にはもう、温厚だけれどせっかちな先生の「じゃあ、この前の続きから。教科書開いてー」という声で授業が始まった。

 日本史の授業の準備をする前に晄汰郎に連れ出されたから、私の机の上は前の授業の教科書とノートがそのままだった。それを急いで日本史と入れ替えながら、私はまた、なんなのあいつ! とシャーペンを握りしめる。

 どうなの、と言われたって、女子は計算をする生き物だ。もともと頭の中に電卓を備えて生まれてくるんだから、今さらどうこうできるわけもない。

 それを恥ずかしいことだとも思っていないし、悪いことだとも思っていない。だってそういう生き物だ。個人差はあるかもしれないけれど、均せばだいたいみんな、同じようなものなんじゃないかと思う。

 それを、本命お守りを渡そうとしたからという理由だけで私のことだけを計算高いと言う晄汰郎が、どうしても許せないのだ。

 周りの子だってみんなしている。さっきの他クラスのグループの子だって、うちのクラスのあの子もこの子も、顔くらいしか知らない子も、みんな多かれ少なかれ計算しているっていうのに。

 ……なんで私だけなの。