男らしくないと言えばそれまでだと思う。けれど私は、晄汰郎はそんな男じゃないと思っていた。

 勝手に裏切られたような気分になるのも間違っていると思う。だって私が勝手に作り上げた理想だし、あまりに身勝手すぎる願望なのだから。

 それでも、晄汰郎には試すようなことをしてほしくなかったのも本音だ。

 野球に一直線に打ち込むように。クラスメイトに頼られるように。誰かの一言に簡単に自分のスタンスを崩さないでほしい。今どき珍しい愚直なまでのその感じが、逆に格好いいんだから。

「……教えてあげないよ。私がなんであんなことを言ったのかも、晄汰郎をどう思ってるのかも、絶対に教えてなんてあげない」

 言うと晄汰郎から「それも宮野の計算のうち?」と皮肉った質問が返ってきた。それには答えずにいると、ちょうどスカートのポケットに入れていたスマホが震え、静かな教室にその機械的な音がやけに大きく響いた。

 見なくてもわかる。友達からの心配の声だろう。それに、そろそろ戻らないと、本当に授業に遅れてしまう。そうしたら、友達にも先生にも、何を言われるかわからない。