「どこかで間違えたのかなあ……」

 またひとりごちて、寄りかかっていた机からトンと離れ、別棟から本校舎への廊下を重い足取りで歩く。二年生の階に着くと、自分の教室から鞄を取り、昇降口へ向かう。

 校舎の外に出ると、私は少しの間だけ足を止め、スマホを片手に再び歩き出した。いつもは裏門からグラウンドの脇を通って駅への坂道を下るのだけれど、今日は正門のほうから帰ろうかと一瞬迷ったためだ。

 けれど、でも、と思い直し、慣れ親しんだいつものコースに足を向けることにした。

 ここで逃げたら、なんか悔しい。

 もちろん、練習の真っ最中だろう晄汰郎が、いつも私がこのコースを通って帰っていることを知っているとは限らない。

 グラウンドにはほかに陸上部やサッカー部やテニス部がうじゃうじゃとひしめき合っているし、緑色のフェンスで囲まれて視界が悪くなっているグラウンドの外に、わざわざ目を向けることがあるとも、なかなか思えない。せいぜい逸れたボールが飛んでくるくらいだろう。

 でも、一年半、同じコースを通っているけれど、そういえば一度も逸れたボールに出くわしたことはなかった。きっとタイミングとか運とかいう、自分の力ではどうにもならない次元の問題なのだろうと思う。