颯ちゃんから、連絡用のスマホを一台プレゼントされた。

リリーだとバレるのが嫌で、携帯は持ってないって言ったから、連絡とれないと困るからって。

しかも、支払いは颯ちゃん持ちで、良心を痛める私に「俺専用だから」の一言で受け取ることになってしまった。

遠慮気味に重ねていた逢瀬も、颯ちゃんからのアプローチもあり、ほぼ毎日となり。

お母さんには和歌ちゃんの家に泊まると嘘をついて外泊して。

2週間を過ぎた頃には、良心で躊躇っていた合鍵を結局頂戴してしまい、颯ちゃんのマンションで夕食の用意をして待つようになった。

颯ちゃんの一人暮らしは、家族と私が会った友人、高坂さんと小林さんの2人以外知らせておらず、合鍵は私以外誰も渡してないとの事。

婚約者の香織さんにも?という疑問もあったけど、一部噂であった政略結婚ならぬ政略婚約で想いがないなら有りえるのかも、と都合良く捉えるようになっていた。

少しでも私の方に気持ちが傾いてくれてたら、嬉しいな、なんて。

最初のうちは仕事が終わってから待ち合わせをして食事をしたりしていたけど、すぐに食べたい物をリクエストされては合鍵で部屋に入って夕食の用意をしたり。

颯ちゃんが接待で遅くなる時でも「部屋で待ってて」と言われると、家に帰らず一緒過ごすようになった。

そんな状態で安心した私は、流されるまま、気が付くと半同棲に近い状態となっていた。

颯ちゃんのクローゼットには、私の最低限の衣類が収納され、要所要所に食器や歯ブラシ等の雑貨も並び。

颯ちゃんが帰宅した時には、玄関まで迎えに出ると「おいで」とばかりに腕を広げるもんだから、嬉しくてその胸に飛び込んだ。

部屋での私の座る位置は、何故か颯ちゃんの足の間だったり膝の上だったりするのには、恥ずかしくて困っちゃう。

でも、その定位置が、時々クッションを抱っこして塞がれてると、ちょっと腹が立って唇を尖らせ頬を膨らませると、颯ちゃんが楽しそうに笑って抱きしめてくれた。

私はクッションをソファの端に追いやって、身体を覆う大きな手に自分の手を重ね満足してTVを堪能する。

なんだか、素顔を隠す前の私たちに戻っようで、おかしい。