大好きな王子様とキスをして平常心でなんかでいられる訳ないじゃん。

しかも、婚約者が居る人……。

ねぇ、颯ちゃん。

颯ちゃん、りこにキスしたんだよ?

私、初めてのキスだったのに……。

颯ちゃんは結婚前に遊びたいの?

そんな軽い人だったの?

颯ちゃんを信じられないと思ってしまう自分と、心のどこかで嬉しいって思ってしまう自分が居る。

その矛盾を、うまく消化出来ない。

ただ、颯ちゃんが好きだって気持ちは消えないから、私も重症なんだろうな。


アリガトウとゴメンナサイは言いましょう。

借りた物はきちんと返しましょう。

悲しんでいる人が居たら、出来るだけ寄り添いましょう。

嘘はついてはだめです。

その他諸々、私に言い聞かせた颯ちゃんが、矛盾した事をしてる。

和歌ちゃんは男は嘘つきだから、全てを信じちゃダメって言うけど、颯ちゃんも他の男の人と一緒なの?

リリーはね、リリーが知ってる颯ちゃんが、全然違う人に見えてうまく受け止められないんだよ。

だけど同時に、リリーとでは適わない関係にときめいたり、颯ちゃんを独占したいって気持ちも湧いてきて、そんな浅ましい自分が怖いの。

その穴に落ちてしまったら、きっと這い上がれなくなるって解っているから。

だから、気持ちの整理がつくまで、距離を置こうと思ったのに。

瞳を上げると、颯ちゃんは真っすぐ私をとらえていて、片眉を上げて見せた。

何か言わなきゃ……。


「嫌ってるわけではないないと、思います。ただ、急に予定が入った……とか、仕事が忙しくてスマホも見れてない、とか……」

「この時間に、未だに連絡1つがないのも?」


うっ。

今までノンストップで動いてから、スマホなんてチェックしてなかったよ……。


「……時間に追われてて、着信に気付かなくって……」

「忙しかったの?」

「えっ、あっ、いえ!そういう時もあるんじゃないかとっ」

「……そうだね。他には?」

「えっと……。色々考える事があったり……気持ちの整理が出来ない、て言うか……」

「気持ちの整理?何か問題でもあったって事?」


なんとか誤魔化したいのに、颯ちゃんはどんどん追及してくる。