このまま立ち行かなくなるのは時間の問題だと囁かれていた。

勿論そんな企業との業務提携などありえず、すぐさま丁重に辞退した。

時同じくして、篠田商事も颯ちゃんが雑誌や取材を受けるようになり、その美貌も話題をよび篠田商事のブランド力はますます勢いついていた時でもあった。

間もなくして、宮川コーポレーションからまた連絡がきて、今度は娘の香織さんと颯ちゃんの縁談話へと転換されてきた。

2人は高校の同級生だし、高校時代男子生徒からかなり人気があった自慢の娘が、颯ちゃんと結婚を前提とした交際を望んでいると付け加えられたものだったそうだが、それは明らかな資金提供を求めるものだった。

即座にそれも断ったけど、その後も引っ切り無しに申し入れがあり、その都度断る作業を繰り返したそうだ。

それは数は両手で数えるまでにもおよび、困ったものだと頭を痛めたらしい。

そうこうしているうちに、何処からか勝手に颯ちゃんと香織さんが婚約したと噂が流れ始めた。

篠田商事の取引先からその噂を知らされた時、大いに驚愕し慄いたそうだ。

どうやら、宮川社長が香織さんに縁談がまとまったと伝え、噂を流し、外堀を埋め始めたらしい。

香織さんも行く先々で名を馳せる颯ちゃんとの婚約話を公言し、人から人へと飛言は拡大させていったとか。

直ちに噂の出所だと言われた宮川社長に訴えて撤回を要求しても、知らぬ存ぜぬを通され躱される。

その間も噂は彼方此方で囁かれ、篠田商事が火消しに回っても追い付かず。

とうとう噂は事実のように定着をみせるようになった。

人の口に戸はたてられないって言うもんね。

そのお陰か、宮川コーポレーションの収益は多少向上をみせるようになった。

あの篠田商事と縁故になる(予定)なら宮川コーポレーションと取引しても大丈夫だろうという企業が増えたからだ。

いざとなれば篠田商事がついている、そんな期待を抱いたのは、篠田商事と何のコネクションを持たず、噂を鵜呑みし、市場調査を怠った企業のみ。

事実か虚構か。

宮川社長にとって、会社が軌道にのればどちらでもよかったのだろう。

話題が大きくなるほど注目されるし、篠田商事的に否定もし辛くなるかもしれない。

そんな中、もしかしたら美人な自慢の娘に心を傾け、結婚を意識するかもしれない。