刻印があるはずと半ば冗談だったのか、このブランドの価格故の確信だったのかは解らないけど、読み上げられた言葉に、皆驚きを隠さなかった。

特に、私の見た目が不可解なものであるのに対して、こんな愛を語るような刻印は衝撃的だったのだろう。


「ダイヤモンドって、天然の物質の中でも一番硬いと言われてるのは知ってる?傷つくことなく永遠に輝き続けるってところから、愛が永続的に続くって意味で婚約指輪の定番なんだって」


まぁ、必ずしも婚約指輪にダイヤモンドを使わなきゃいけないって定義はないけど、と田所さんが続けた。


「これって貰った時、彼はなんて?」


呆然とする私に、早苗さんが。


「誕生日プレゼントだと……」


それ以外、何も言ってなかった、よね……?


「このブランドのこの指輪って、ブライダルシリーズで出されてるやつなんだよ。それにわざわざ2人の名前を刻印するってのは……かなり深い意味があると思う……」


これから結婚する今井さんの説明に、私は頭を抱えて前のめりに身体を折った。

頭の中がぐちゃぐちゃで、意味が解らなくてパンクしそうだった。

これは、颯ちゃんがリリーにくれた物。

恋人だったりこにではなく、家族のリリーくれた物。

だから、この指輪をくれたのは単なる偶然に違いない。

たまたま選んだ物が、たまたまブライダルシリーズだっただけで、何の深い意味もないはず。

だって、現に颯ちゃんには婚約者が居て、りこに代わる新しい愛人だって居るもの。

きっとニュアンス的に、家族として愛を込めてってだけで、私が期待したいような意味合いなんて絶対ないに決まってる。

さっき散々颯ちゃんの近況を聞いたばかりなのに、勘違いも期待もしちゃいけない。


「てか、黒川さんの彼氏も『ソウゴ』て名前なんだね~」


単純に、噂の篠田颯吾と指輪に刻まれたソウゴの名前の共通点を口にした今井さんに発言に、どきっとした。

下の名前が一緒だってだけで、バレるはずはないんだけど……。